
外国人雇用の8つの注意点とは?メリットや必要な手続きも解説
人材不足が深刻な日本において、外国人雇用は企業の持続的成長に欠かせない手段です。
しかし、在留資格との整合性や日本語能力の確認など、法的・実務的な注意点が多数存在します。
この記事では、外国人雇用における8つの重要ポイントを中心に、メリットや手続きの流れも交えて、採用担当者が押さえておくべき基礎知識をわかりやすく解説します。
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目次[非表示]
- 1.企業における外国人雇用の動向
- 1.1.企業の外国人雇用の傾向
- 1.2.特定技能外国人の雇用の現状
- 2.外国人を雇用する際の8つの注意点
- 2.1.業務内容と在留資格が一致しているか確認する
- 2.2.日本語能力を対話形式で確認する
- 2.3.日本人と同一条件で募集する
- 2.4.日本人雇用にはない法律や届け出に注意する
- 2.5.労働条件を正しく理解しているか確認する
- 2.6.教育環境を整える
- 2.7.人材紹介会社は慎重に選ぶ
- 2.8.在留資格の更新管理をする
- 3.外国人雇用のメリット
- 3.1.人手不足の解消
- 3.2.コストの最適化や助成金の利用
- 3.3.訪日外国人への多言語対応
- 3.4.海外進出への足掛かり
- 4.外国人雇用のデメリット
- 4.1.コミュニケーションが容易でない
- 4.2.文化や習慣の違いがある
- 4.3.手続きやルールの確認が必要
- 4.4.雇用までに時間がかかる
- 5.外国人を雇用するまでの手続き
- 5.1.海外にいる外国人を日本で雇用する場合
- 5.2.日本で働いている外国人を雇用する場合
- 5.3.外国人留学生を雇用する場合
- 6.まとめ
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企業における外国人雇用の動向
日本では、少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、外国人雇用が企業活動の持続性と競争力強化に寄与する重要な施策として注目されています。
厚生労働省の統計によると、外国人労働者数は年々増加しており、特に中小企業における採用ニーズの高まりが顕著です。
業種別では、製造業、介護、飲食業などの現場業務に加え、ITやグローバル対応が必要とされる分野でも活躍の場が広がっています。
関連記事:日本の雇用問題とは?解決に向けた対策や知っておくべき統計データを解説
企業の外国人雇用の傾向
企業の外国人採用は、単なる人手不足の補填から戦略的な人材活用へと変化しています。
最近では、日本語能力や専門スキルだけでなく、異文化理解力や海外展開に資する知見を持つ人材への需要が高まっており、募集段階から「多様性の受容」を前提にした採用基準が設定されることも増えています。
また、雇用形態も正社員雇用、派遣、業務委託など多様化しており、企業ごとの人材戦略に応じた柔軟な運用が求められています。
特定技能外国人の雇用の現状
2019年に導入された「特定技能」制度は、即戦力となる外国人材の受け入れを目的に創設された新しい在留資格です。
対象業種は現在14分野に広がっており、建設、農業、宿泊、介護など、慢性的な人手不足に悩む業界での活用が進んでいます。
雇用企業には、外国人材の生活支援、就労支援計画の策定、定期的な報告義務などが課されており、制度運用には法的理解と体制整備が不可欠です。
現状では制度理解の不十分さや手続きの煩雑さが課題となっているものの、制度改正や支援拡充により、今後の活用拡大が期待されています。
関連記事:企業の義務である障害者雇用 2024年改正「障害者雇用促進法」について詳しく解説
外国人を雇用する際の8つの注意点
日本企業が外国人を雇用する場合、法的・実務的な注意点が数多く存在します。
円滑かつ適切な雇用関係を構築するためには、以下の8つのポイントを事前に押さえておくことが不可欠です。
業務内容と在留資格が一致しているか確認する
外国人が就労するには、業務内容が在留資格の範囲内である必要があります。
例えば、通訳業務には「技術・人文知識・国際業務」の資格が必要です。
不一致の場合は不法就労となるリスクがあるため、事前に職務と資格の照合を徹底しましょう。
日本語能力を対話形式で確認する
業務上の指示や職場内のコミュニケーションに日本語力は欠かせません。
履歴書に記載された語学レベルでは把握しきれないため、面接では実際の会話による理解力・表現力の確認が重要です。
業務に必要な日本語レベルを明確にし、ミスマッチの防止に努めましょう。
関連記事:採用のミスマッチを防ぐリファレンスチェックとは?メリット・デメリットについて解説
日本人と同一条件で募集する
労働基準法は国籍を問わず全ての労働者に適用されます。
給与、勤務時間、福利厚生などの条件を日本人と同一に設定することが原則です。
外国人だからといって待遇を変えることは、差別とみなされる恐れがあります。
採用要件の明文化と説明責任が求められます。
日本人雇用にはない法律や届け出に注意する
外国人雇用においては、雇用開始時の在留カードの確認、雇用対策法に基づく「外国人雇用状況の届出」が必要です。
加えて、特定技能制度を活用する場合には、支援計画の提出や定期報告義務など、法的な対応が追加されます。
制度ごとの違いを理解し、対応漏れを防ぐ体制整備が欠かせません。
労働条件を正しく理解しているか確認する
文化や言語の違いによって、労働条件の誤認が生じる可能性があります。
雇用契約書は外国人の母語と日本語の両方で作成し、勤務時間、休憩、休日、給与体系などを具体的に説明することで、相互理解を深めましょう。
誤解を防ぐために、定期的な説明機会を設けることも有効です。
関連記事:労働契約とは?基本原則やルール、よくあるトラブルや禁止事項をわかりやすく解説
教育環境を整える
外国人にとって、日本の職場文化や業務習慣には馴染みがない部分も多くあります。
初期教育やOJT制度を整備し、業務の流れや社内ルールを明示することでスムーズな適応を支援できます。
また、継続的なサポート体制や相談窓口の設置は、定着率の向上にもつながります。
人材紹介会社は慎重に選ぶ
外国人材の採用にあたり、紹介会社を利用する企業も増加しています。
しかし、法令に適合しない仲介業者を利用すると、企業側も責任を問われる可能性があります。
紹介業者の許認可、過去実績、契約条件などを事前に確認し、信頼性の高い業者を選定することが重要です。
在留資格の更新管理をする
就労中の外国人は在留資格の期限が設定されています。
更新手続きを怠ると、本人が不法滞在となる可能性があり、企業も監督責任を問われる場合があります。
社内で在留資格の有効期限を一覧管理し、更新時期にはリマインド通知を行うなど、明確な運用ルールの構築が必要です。
関連記事:人材育成とは?注目される理由や育成の目的、方法をわかりやすく解説
外国人雇用のメリット
近年、グローバル化の進展と人材不足の深刻化を背景に、外国人雇用は企業にとって有効な経営戦略となっています。
以下では、実務的な観点から見た主なメリットを4つ解説します。
人手不足の解消
日本では少子高齢化に伴い労働力人口が減少し、特に現場職やサービス業を中心に深刻な人手不足が続いています。
外国人労働者の採用は、その不足を補う即効性のある対策です。
多くの外国人材は若年層が中心であり、長期的な活躍が見込める点も大きな利点です。
関連記事:人事と労務の役割と違いとは?業務内容や年間スケジュール、効率化の方法を解説
コストの最適化や助成金の利用
外国人雇用には、雇用調整や業務分担によるコスト最適化が可能なだけでなく、技能実習制度や特定技能制度の利用によって、各種助成金の申請も可能になります。
例えば、教育訓練や定着支援に関する補助制度を活用することで、企業負担を軽減しつつ、育成体制を強化できます。
訪日外国人への多言語対応
観光業や飲食、小売業などでは、外国人従業員が持つ言語スキルが大きな戦力となります。
英語、中国語、韓国語など、多言語対応が可能な人材を配置することで、訪日外国人への接客品質を向上させ、顧客満足度や再来店率の向上が期待できます。
インバウンド需要の取り込みにも直結するメリットです。
海外進出への足掛かり
外国人従業員は、自国の文化や商習慣に精通しているため、企業の海外展開における現地調査やネットワーク構築において重要な役割を果たします。
現地法人の立ち上げや販路開拓、マーケティング戦略の策定にも貢献できるため、グローバル戦略を推進するうえで不可欠な人材となり得ます。
関連記事:海外進出に欠かせない国際法務とは?必要なスキルや企業の取り組み、最新トピックスを解説
外国人雇用のデメリット
外国人材の採用は多くのメリットをもたらす一方で、企業運営上で注意すべき課題も存在します。
下記では、外国人雇用に伴う主なデメリットを現場目線で整理しました。
コミュニケーションが容易でない
言語の違いや表現方法の差により、業務指示や日常会話での誤解が生じる可能性があります。
特に、専門用語や敬語表現、暗黙の了解に依存する日本企業の職場文化では、認識のズレが発生しやすくなります。
これにより業務効率が低下したり、チーム内での摩擦が生じることもあります。
対策としては、翻訳ツールの活用や簡易なマニュアル整備、定期的なフィードバック面談が有効です。
文化や習慣の違いがある
出身国による時間感覚や上下関係、意思決定のプロセス、宗教的配慮など、文化的な背景が日本の職場文化と異なる場合があります。
たとえば、報連相を重視する日本型マネジメントに対し、外国人は自主性を重んじる傾向が強く、ズレを感じるケースもあります。
企業側は受け入れ体制として、多文化理解を促す研修や柔軟な運営方針の導入が求められます。
関連記事:海外企業や外国人への反社チェックは必要?国際取引を安全に行う方法
手続きやルールの確認が必要
外国人を雇用する際には、在留資格の確認や雇用状況の届出など、法令に基づく手続きが多数あります。
特定技能制度や技能実習制度のように、支援計画の策定や報告義務が加わる制度もあり、企業には一定の法的知識と対応力が求められます。
これらに不備があると罰則の対象になる可能性があるため、専門家との連携や社内マニュアルの整備が必要です。
雇用までに時間がかかる
外国人材の採用には、入国審査や在留資格の取得、ビザ申請など複数のプロセスを経る必要があり、採用決定から実際の就業開始まで数ヶ月を要するケースも珍しくありません。
特に海外在住者を招へいする場合は、申請書類の準備や行政対応の負荷も高く、スケジュール管理が重要になります。
余裕を持った採用計画が欠かせません。
関連記事:海外取引先への契約書に暴力団排除条項を英語で盛り込むには 海外反社チェックも解説
外国人を雇用するまでの手続き
外国人を採用する際は、就労形態や在留資格によって必要な手続きが異なります。
以下では代表的な3パターンの雇用フローを整理します。
海外にいる外国人を日本で雇用する場合
海外居住の外国人を採用する場合、まず雇用契約を締結し、「在留資格認定証明書」の交付申請を出入国在留管理庁へ行います。
必要書類には、雇用契約書・会社案内・履歴書・職務内容の説明などがあります。
認定証明書が交付されると、本人が本国の日本領事館でビザ申請を行い、入国後は在留カードが発行されて正式な雇用が始まります。
関連記事:個人事業主への反社チェック・コンプライアンスチェックを実施する必要性について解説
日本で働いている外国人を雇用する場合
すでに在留資格を持って日本で働いている外国人を採用する際は、現在の在留資格が予定している業務と一致しているか確認する必要があります。
一致しない場合は、在留資格変更申請を行う必要があります。
また、雇用主は「外国人雇用状況の届出」をハローワーク経由で行う義務があります。
適切な資格確認と届出が雇用開始の前提となります。
外国人留学生を雇用する場合
外国人留学生をアルバイトで雇用する際は、「資格外活動許可」を取得済みかどうかが重要です。
許可がある場合でも、週28時間以内(学校が長期休暇中は最大40時間)の労働制限があります。
卒業後に正社員として雇用するには、在留資格の「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などへの変更申請が必要です。
就職活動から申請完了までのスケジュール管理もポイントです。
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まとめ
外国人雇用は人手不足の解消や企業のグローバル化に貢献する一方、法的な手続きや文化的配慮が欠かせません。
在留資格の確認や日本語能力の評価など、基本的なポイントを押さえることで、円滑かつ持続的な雇用関係が構築できます。
企業側の理解と準備が、成功の鍵となります。
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