
社内研修とは?目的・種類・進め方まで徹底解説【人材育成の基本】
企業の成長を支えるためには、社員一人ひとりの能力開発が欠かせません。
その中心的な取り組みが「社内研修」です。
この記事では、社内研修の目的や種類、実施方法について解説します。
OJT・Off-JTといった研修形式から階層別の内容まで、人材育成の基本的な考え方と運用のポイントを解説します。
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目次[非表示]
- 1.社内研修とは
- 2.社内研修の形式と階層
- 2.1.社内研修の2つの形式
- 2.2.社内研修の4つの階層
- 3.社内研修の具体的な種類
- 3.1.職種別社内研修の種類
- 3.2.テーマ別社内研修の種類
- 3.2.1.ビジネスマナー研修
- 3.2.2.ビジネスマインド研修
- 3.2.3.コンプライアンス研修
- 3.2.4.ハラスメント研修
- 3.2.5.メンタルヘルス研修
- 4.社内研修の進め方
- 4.1.自社の課題を分析する
- 4.2.研修によって達成したい目標を定める
- 4.3.研修計画を策定する
- 4.4.運用ルールを決める
- 4.5.講師を選定する
- 4.6.研修実施後のフォロー体制を決める
- 5.まとめ
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社内研修とは
社内研修とは、企業が自社の社員に対して実施する教育・育成プログラムを指します。
業務に必要なスキルや知識の習得、組織文化の理解や意識の醸成など、人材の能力向上を目的として計画的に実施されるものです。
企業が自社の戦略や課題に即して内容を設計できるため、より実践的で継続的な人材育成が可能です。
社内研修の主な目的
社内研修の目的は主に以下の3点に集約されます。
1つ目は「業務遂行力の向上」。
社員が業務を円滑に進めるためのスキルや知識の習得を支援します。
2つ目は「組織文化・価値観の浸透」。
企業理念や行動指針の理解を深め、組織一体感の醸成に寄与します。
3つ目は「キャリア形成の支援」。
社員が主体的にキャリアを築けるよう、職階に応じた成長機会を提供することも重要な目的の一つです。
関連記事:コンプライアンス研修の目的と内容 テーマ別事例や実施方法を解説
社内教育との違い
社内研修と社内教育は混同されがちですが、その定義には明確な違いがあります。
社内教育は、社員の育成を目的とした広義の取り組み全般を指し、OJTや人事評価、自己学習支援なども含まれます。
一方、社内研修は教育の一部に位置付けられ、講義や演習などを通じた体系的なプログラムを中心としています。
社外研修との違い
社内研修と社外研修の主な違いは、実施主体と内容の汎用性にあります。
社外研修は外部の教育機関やコンサルティング企業が提供するもので、最新の理論や他社とのネットワーク構築が可能です。
一方、社内研修は自社の課題や目標に即して設計されるため、より実践的かつ即効性のある内容とすることができます。
また、費用面でも継続的な運用が可能なため、中長期的な人材育成の手段として有効です。
関連記事:人材育成とは?注目される理由や育成の目的、方法をわかりやすく解説
社内研修の形式と階層
社内研修は、社員の成長段階や業務内容に応じて、形式および階層別に設計されることで、より効果的な人材育成が可能となります。
ここでは、研修形式の違いや社員階層ごとのポイントについて詳しくご説明します。
社内研修の2つの形式
社内研修には大きく分けて「OJT研修」と「Off-JT研修」の2種類の形式があり、それぞれに特徴と適した活用方法があります。
それぞれ解説します。
OJT研修
OJT(On-the-Job Training)研修は、実際の業務を通じて指導・育成を行う形式です。
上司や先輩社員が業務の流れを説明しながら、現場での仕事の進め方を指導することで、実践的なスキル習得が期待されます。
日常業務の中で学びを得られるため、即戦力の育成には非常に有効ですが、指導者のスキルや研修の設計によって効果に差が出る点には注意が必要です。
Off-JT研修
Off-JT(Off-the-Job Training)研修は、業務から一時的に離れ、座学やワークショップなどを通じて体系的に知識やスキルを習得する形式です。
ビジネスマナーやコンプライアンス、マインドセットなど、業務とは直接関係しないテーマを学ぶ場面にも適しており、社員が自らの思考を整理したり、新しい視点を得たりする機会にもなります。
OJTでは補いきれない理論面の強化に効果的です。
関連記事:人事評価制度についてわかりやすく解説!評価基準や運営ポイントをご紹介
社内研修の4つの階層
社員の経験年数や職位によって、研修の内容や目的は大きく異なります。
以下に階層別の社内研修の特徴をまとめました。
新入社員向け
新入社員に対する研修は、社会人としての基本的なマナーや企業理念の理解、業務の進め方などが中心となります。
早期に職場に適応し、安心して働ける状態を整えることが目的です。
座学による基礎研修とOJTを組み合わせることで、知識と実践の両面で支援することが望ましいです。
若手社員向け
入社2〜5年目程度の若手社員に対しては、業務遂行力の向上と主体的な行動を促す研修が重要となります。
PDCAの理解や業務改善の視点、チームへの貢献意識を育む内容が効果的です。
また、キャリア形成を意識させるため、個人の強みや価値観に焦点を当てた研修も有用です。
関連記事:人事評価制度を導入するメリットとは?課題や制度を見直すべきタイミングを解説
中堅社員向け
中堅社員には、後輩指導や部門運営といった、組織の中核を担う役割に対応した研修が求められます。
リーダーシップの強化や部下育成、業務管理力の向上を目的としたプログラムを通じて、次世代の管理職候補としての基盤を築きます。
部署横断型のプロジェクト経験などを研修に取り入れることで、視野の拡大も図れます。
管理職向け
管理職向けの研修では、マネジメントスキル全般の向上が目的となります。
目標設定・評価の技術や業績管理、部下との関係性構築、ハラスメント防止に関する知識などが主要なテーマです。
経営視点を持つことで組織全体の方向性を理解し、戦略的な意思決定ができるようになることが重要です。
また、外部講師によるケーススタディやロールプレイングも効果的な手法の一つです。
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社内研修の具体的な種類
社内研修は、社員の職務や役割、また企業の課題や方針に応じて、多様な形で設計・運用されます。
ここでは職種別とテーマ別に分けて、代表的な社内研修の種類をご紹介します。
職種別社内研修の種類
職種ごとの特性に合わせた研修は、実務に直結するスキルや知識の習得に効果的です。
業務理解の深化や職能の向上を目指し、それぞれの業務領域に最適化された内容が組まれます。
営業職向け
営業職向けの研修では、顧客対応力や商談力、プレゼンテーションスキルなど、外部との接点における対応力の強化が中心となります。
また、ヒアリング技術や課題解決型の営業手法、信頼関係構築の方法などを学ぶことで、成約率の向上や顧客満足度の改善につながります。
関連記事:採用担当者必見!中途採用の成功事例と成功させるポイントを徹底解説
事務職向け
事務職向けの研修では、業務効率化やPCスキル、文書作成能力の向上が重視されます。
ExcelやWordの操作技術、業務プロセスの標準化、情報管理の基礎などを習得することで、正確で迅速な事務処理が可能となります。
また、社内外とのコミュニケーション能力強化も重要な研修テーマの一つです。
企画職向け
企画職向けの研修では、市場分析力や構想力、社内調整力といった総合的な企画遂行力を高める内容が求められます。
ロジカルシンキングや企画書作成、プレゼンテーション技法に加え、プロジェクトマネジメント研修なども有効です。
ビジネスモデルやトレンドに関する知識も、企画精度の向上に直結いたします。
関連記事:人事と労務の役割と違いとは?業務内容や年間スケジュール、効率化の方法を解説
テーマ別社内研修の種類
テーマ別の社内研修は、全職種・全階層を対象に、横断的に必要とされるマナーや知識、価値観を育てるために実施されます。
企業文化の醸成やリスク管理、健康支援などの観点から設計されるのが特徴です。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修では、社会人としての基本動作や言葉遣い、身だしなみ、電話・メール対応などを学びます。
社内外の信頼構築を目的とし、新入社員や若手社員の早期定着にも寄与いたします。
対人マナーだけでなく、タイムマネジメントや文書の整理整頓なども含めることで、職場での基本行動を体系的に定着させることが可能です。
ビジネスマインド研修
ビジネスマインド研修は、働く上での意識や姿勢を育てることを目的としています。
目的意識の持ち方や当事者意識の醸成、主体性の発揮、PDCAサイクルの理解などを通じて、自律型人材の育成を目指します。
特に、成長意欲を引き出すためのキャリアビジョン設計ワークなどは、若手社員層に対して効果的です。
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コンプライアンス研修
コンプライアンス研修では、法令遵守の重要性や社内規定の理解、倫理的な意思決定の考え方などを学びます。
企業としての信頼性を守るため、コンプライアンス違反の事例やリスク管理方法を共有することで、未然防止につなげます。
特に役職者や管理職層には、組織全体への影響を理解したうえでの教育が不可欠です。
ハラスメント研修
ハラスメント研修では、パワハラ・セクハラなどの定義と具体例、予防策や対応方法について学びます。
職場環境を健全に保ち、安心して働ける風土づくりを推進するため、管理職層だけでなく一般社員にも広く実施されるべき内容です。
模擬ケースやグループワークを取り入れることで、当事者意識を高める効果が期待されます。
メンタルヘルス研修
メンタルヘルス研修は、社員の心理的な健康維持とストレス対処能力の向上を目的として実施されます。
セルフケアの方法や支援体制の理解、メンタル不調の兆候への気づきを促す内容が中心です。
従業員の健康支援を通じて、生産性や職場満足度の向上を図る重要な研修です。
関連記事:質を向上させるコンプライアンス研修の資料作成方法を解説
社内研修の進め方
効果的な社内研修の実施には、体系的なプロセスの構築が不可欠です。
企業の目的や課題を正確に把握し、適切な計画と運用を通じて研修効果を最大化することが求められます。
以下では、社内研修を実施する際の主なステップについて解説します。
自社の課題を分析する
まず初めに、自社が抱えている人材に関する課題を明確にする必要があります。
たとえば、若手社員の定着率が低い、マネジメントスキルが不足している、業務効率が伸び悩んでいるといった具体的な問題点を洗い出すことで、研修の焦点が定まります。
人事評価データや面談結果、部署別のヒアリングなどを活用し、課題の根本要因を把握することが重要です。
研修によって達成したい目標を定める
課題が明確になった後は、研修で解決したい目標を設定します。
「営業職の提案力を強化する」「中堅社員のリーダーシップを育成する」「ハラスメント防止意識を高める」など、具体性のある目標を立てることで、研修の設計と効果測定が容易になります。
可能であれば定量的な指標(例:研修後3か月以内の業務改善率)もあわせて設定すると、評価の質が高まります。
関連記事:コンプライアンス違反を起こす人と組織 事例と対策を紹介
研修計画を策定する
目標が定まったら、研修の詳細な計画を立てていきます。
対象者の選定、実施時期、研修頻度、予算の算出などを一括して検討し、社内リソースとの調整を行います。
内容については、OJT・Off-JTのどちらを採用するか、座学やワークショップの構成、eラーニングとの併用など、多様な形式を組み合わせながら設計することが効果的です。
運用ルールを決める
研修を円滑に進めるためには、社内での運用ルールを整備することが不可欠です。
参加義務の有無、遅刻・欠席の取り扱い、受講記録の管理方法、フィードバック提出の有無などを明文化することで、研修の継続的運用が可能となります。
また、社内ポータル等で情報を一元管理する仕組みを導入することで、運用効率も向上いたします。
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講師を選定する
研修内容に応じて、適切な講師の選定を行います。
社内講師を起用する場合は、対象テーマに精通し、指導力がある人材を確保する必要があります。
一方、専門性が高い研修や中立性が求められる内容については、外部講師の活用が効果的です。
最近ではeラーニング教材やオンライン配信型の講義を組み合わせるケースも増え、予算や目的に応じた柔軟な対応が可能です。
研修実施後のフォロー体制を決める
研修を実施しただけでは、学びが定着しづらいのが現実です。
そのため、実施後のフォロー体制も計画段階で組み込むことが重要です。
具体的には、アンケートによる定性評価、上司による面談、OJTの再設計、行動目標の達成度確認などを実施することで、研修内容の実務への反映を促進いたします。
研修サイクルをPDCAで回す体制が整えば、企業全体の人材開発力が向上します。
関連記事:人材マネジメントとは?その内容や必要性、ポイントを解説
まとめ
社内研修は、単なるスキルアップの手段にとどまらず、企業文化の醸成や組織力強化に直結する重要な施策です。
自社の課題に応じた体系的な研修設計と運用が、人材育成の基盤を支え、企業の持続的成長に大きく寄与します。
ぜひ自社に合った社内研修のあり方を再検討してみましょう。
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