給与計算の基本と流れを徹底解説！控除額の計算方法や注意点も紹介

給与計算は、従業員の勤怠情報や契約内容をもとに支給額と控除額を算出し、手取り額を決定する重要な業務です。

社会保険料や税金の計算には法令遵守が求められ、ミスがあると信頼や法的リスクに直結します。

この記事では、給与計算の基本から流れ、控除の仕組み、注意点までをわかりやすく解説します。

【参考】より深く知るための『オススメ』コラム

👉労務コンプライアンスとは？違反事例とチェックポイントを解説

👉反社チェック（コンプライアンスチェック）を無料で行う方法

👉人事と労務の役割と違いとは？業務内容や年間スケジュール、効率化の方法を解説

【初心者必見】反社チェックのやり方・業務フローまとめ

▶とりあえずダウンロード！【無料で反社チェックの基本を学ぶ】

給与計算とは

給与計算とは、従業員の勤怠情報や契約条件に基づいて、支給額・控除額・手取り額を正確に算出する業務です。

企業にとっては、従業員の生活を支える重要な業務であり、法令遵守と信頼性が求められます。
給与計算は単なる数字の処理ではなく、労働基準法や税法、社会保険制度などの法律に則って行う必要があります。

労働基準法では、賃金支払いに関して「通貨で支払う」「直接本人に支払う」「全額支払う」「毎月1回以上支払う」「一定期日に支払う」という5つの原則が定められています。

これらは従業員の権利を守るための基本ルールであり、企業が給与を適切に支払うための指針となります。
給与計算を行う際は、これらの原則を確実に守ることが不可欠です。

関連記事：バックオフィス業務とは？具体的な業務内容と課題、効率化する方法を解説

給与計算は、企業が従業員に対して適切な報酬を支払うために欠かせない業務です。
正確な計算と法令遵守が求められるため、各ステップを丁寧に進める必要があります。

ここでは、給与計算業務の基本的な流れを7つのステップに分けて解説します。

給与計算の第一歩は、勤怠情報の締め処理です。
従業員の出勤日数、残業時間、深夜勤務、休日出勤、遅刻・早退・欠勤などの情報を集計します。

タイムカードや勤怠管理システムを活用し、正確なデータを取得することが重要です。
勤怠情報に誤りがあると、後の計算に大きな影響を与えるため、締め前の確認作業を徹底しましょう。

勤怠情報をもとに、従業員に支払うべき総支給額を算出します。
基本給に加え、残業手当、深夜手当、休日出勤手当、通勤手当、役職手当などの各種手当を加算します。

これらは就業規則や雇用契約書に基づいて計算されるため、ルールを明確にしておくことが大切です。

また、インセンティブや賞与がある場合は、支給条件を満たしているかどうかも確認しましょう。

関連記事：人材管理の方法は？手順やメリット、データベースの作成方法を解説

総支給額が算出されたら、次に控除額の計算を行います。
控除には以下のような項目があります。

• 健康保険料
• 厚生年金保険料
• 介護保険料（40歳以上65歳未満が対象）
• 雇用保険料
• 所得税（源泉徴収）
• 住民税（前年の所得に基づく）

これらの控除は法令に基づいて計算されるため、最新の料率や税額表を確認する必要があります。
控除額の詳細については、次のセクションで詳しく解説します。

総支給額から控除額を差し引いた金額が、従業員の手取り額となります。
これは従業員が実際に受け取る金額であり、給与明細にも明記されます。

手取り額が予想と異なる場合、従業員から問い合わせが入ることもあるため、計算根拠を明確にしておくことが望ましいです。

関連記事：雇用保険の加入条件とは？加入するメリット・デメリットや企業への罰則も解説

給与計算が完了したら、賃金台帳の更新や給与明細の作成などの事務処理を行います。
賃金台帳は労働基準法で作成が義務付けられており、従業員ごとの支給額・控除額・手取り額などを記録します。

給与明細は従業員に配布されるもので、内容が明確であることが求められます。
最近では、電子明細を導入する企業も増えています。

事務処理が完了したら、いよいよ給与の支払いです。
支払い方法は銀行振込が一般的ですが、企業によっては現金支給や電子マネーによる支払いを採用している場合もあります。

支払日は就業規則で定められており、遅延なく支払うことが法令上も求められます。

最後に、控除した社会保険料や税金を関係機関に納付します。
健康保険料・厚生年金保険料は日本年金機構、雇用保険料は労働局、所得税は税務署、住民税は各自治体へ納付します。

納付期限を守らないと延滞金が発生するため、スケジュール管理が重要です。

関連記事：雇用保険料とは？計算方法や覚えておくべきポイントを解説

控除額の計算方法

給与計算において、総支給額から差し引かれる「控除額」の計算は非常に重要です。
控除額には、法律で定められた社会保険料や税金などが含まれており、これらを正確に算出することで、従業員の手取り額が決定されます。

ここでは、主な控除項目である社会保険料、介護保険料、雇用保険料、所得税、住民税の計算方法について解説します。

社会保険料には、健康保険料と厚生年金保険料が含まれます。
これらは、従業員の「標準報酬月額」に基づいて計算され、企業と従業員がそれぞれ半額ずつを負担します。

標準報酬月額は、毎年4月から6月の給与をもとに決定され、年に1回見直しが行われますされます。
保険料率は都道府県や保険組合によって異なるため、最新の料率表を確認することが大切です。

介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員が対象となります。
健康保険料に上乗せされる形で徴収され、こちらも標準報酬月額に基づいて計算されます。

介護保険料率も毎年見直されるため、年度ごとの変更に注意が必要です。
対象者の年齢を正確に把握し、該当者にのみ適用するようにしましょう。

関連記事：雇用形態とは？保険の適用範囲や管理のポイントを解説

雇用保険料は、従業員の賃金総額に一定の料率を掛けて算出されます。
料率は業種によって異なり、一般の事業、農林水産業、建設業などで区分されています。

雇用保険料も企業と従業員が分担して支払いますが、労働者負担分のみが給与から控除されます。
年度ごとに料率が変更されることがあるため、厚生労働省の発表を確認しましょう。

所得税は、源泉徴収制度により毎月の給与から天引きされます。
計算には、国税庁が公表している「源泉徴収税額表」を使用します。

扶養親族の数や社会保険料控除後の課税対象額に応じて、該当する税額を算出します。
年末調整や確定申告によって過不足が調整されるため、毎月の計算を正確に行うことが重要です。

住民税は、前年の所得に基づいて各自治体が課税額を決定し、翌年の6月から翌々年の5月までの12か月間にわたって徴収されます。

企業は、自治体から送付される「特別徴収税額通知書」に基づき、毎月の給与から定額を控除します。

新入社員や中途入社者については、普通徴収となる場合もあるため、個別に確認が必要です。

関連記事：労務トラブルとは？発生時の対応手順や注意点、未然に防ぐ対策を解説

給与計算をする際のポイント

給与計算は、単に数字を処理するだけでなく、法令や社内ルールを正しく理解し、従業員に対して公平かつ正確な報酬を支払うための重要な業務です。

ここでは、給与計算を行う際に特に注意すべき3つのポイントについて解説します。

最低賃金は、都道府県ごとに定められており、毎年改定されるため、最新の情報を確認することが不可欠です。
また、特定の産業に対しては「特定最低賃金」が設定されている場合もあります。

これらを下回る賃金を支払うと、労働基準法違反となり、罰則の対象になる可能性があります。
特にパート・アルバイトなど時給制の従業員が多い企業では、地域ごとの最低賃金を把握し、適正な賃金設定を行うことが重要です。

関連記事：企業におけるガバナンスとは？強化する方法やメリットをわかりやすく解説

給与計算では、保険料や税金の計算において円未満の端数が発生することがあります。
これらの端数処理には「四捨五入」「切り捨て」「切り上げ」などの方法があり、企業ごとにルールを定めておく必要があります。

端数処理の方法が曖昧だと、毎月の給与額にばらつきが生じたり、従業員からの問い合わせが増える原因になります。

社内規定や給与計算ソフトの設定を見直し、統一された処理を行いましょう。

給与計算は、毎月決まったスケジュールで実施することが求められます。
勤怠締め日、計算日、支払日などを明確にし、関係部署との連携をスムーズに行える体制を整えることが重要です。

特に、締め日以降に勤怠修正が発生する場合に備え、対応ルールも決めておくと、トラブルを防ぐことができます。

給与計算のタイミングが曖昧だと、支払い遅延や計算ミスにつながるため、業務フローを定期的に見直すことも有効です。

関連記事：社内規程の種類と作り方、作成のポイントをわかりやすく解説

給与計算の注意点

給与計算は、従業員の生活に直結する非常に重要な業務です。
そのため、正確性と安全性が求められ、少しのミスや不注意が大きなトラブルにつながる可能性もあります。

ここでは、給与計算を行う際に特に注意すべき4つのポイントについて解説します。

給与計算では、従業員の氏名、住所、マイナンバー、銀行口座、扶養家族の情報など、機密性の高い個人情報を取り扱います。

これらの情報が漏洩すると、企業の信用失墜や法的責任を問われるリスクがあります。
パスワード管理やアクセス制限、データの暗号化など、情報セキュリティ対策を徹底しましょう。

また、紙媒体での管理を行っている場合は、施錠管理や廃棄方法にも注意が必要です。

関連記事：情報漏洩を防ぐコンプライアンス対策　関連法律と罰則についても解説

Excelなどを使って手作業で給与計算を行っている場合、入力ミスや計算式の誤りが発生しやすくなります。
特に従業員数が多い企業では、人的ミスのリスクが高まります。

これを防ぐためには、給与計算ソフトの導入や、ダブルチェック体制の構築が有効です。
また、計算結果を自動で検証する仕組みを取り入れることで、ミスの早期発見につながります。

社会保険料や税金の計算は、法令や料率の変更に応じて毎年見直されます。
古い情報をもとに計算を行ってしまうと、過不足が生じ、従業員や関係機関とのトラブルにつながる恐れがあります。

厚生労働省や国税庁などの公式情報を定期的に確認し、常に最新のルールに基づいた計算を行うことが重要です。

関連記事：DX推進とは？注目される背景・メリット・成功のポイントをわかりやすく解説

給与計算の基礎となるのが勤怠情報です。
出勤・退勤時間、残業、深夜勤務、休暇などの記録が正確でなければ、支給額や控除額に誤りが生じます。

タイムカードや勤怠管理システムを活用し、リアルタイムでの記録と確認を行いましょう。
また、従業員自身による申請内容と実際の記録に差異がないかをチェックする体制も必要です。

関連記事：採用後に必要な手続き一覧！入社前後・保険・税金まで徹底解説

まとめ

給与計算は、企業の信頼性と従業員の満足度に直結する重要な業務です。
正確な勤怠管理・法令遵守・適切な控除計算を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な業務運営が可能になります。

給与計算ソフトの導入も視野に入れ、効率化と精度向上を図りましょう。

関連記事：【採用担当者必見】面接時に聞くべきこととは？基本的な流れや人材を見極めるポイントを解説
関連記事：日本の雇用問題とは？解決に向けた対策や知っておくべき統計データを解説