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IPO準備企業が整備すべき人事・労務とは 懸念点についても解説

IPOを目指す場合、経営の基礎や体制が整っているか上場審査の際、厳しくチェックされます。
その中でも人事や労務については売上や利益を上げることが優先されることにより後回しにされがちです。

そこで今回は、IPO準備企業が整備すべき人事・労務の面でどのような整備が必要か、懸念点についても具体例を交えながら解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.IPO準備に必要な人事・労務基盤とは
    1. 1.1.IPO準備に人事・労務の整備が必要な理由
    2. 1.2.人事・労務の整備の仕方
      1. 1.2.1.人事制度の整備の仕方
      2. 1.2.2.労務管理の整備の仕方
  2. 2.IPO準備企業が直面する人事・労務の懸念点 確認すべき事柄とは
    1. 2.1.就業規則・労使協定等の規則類
      1. 2.1.1.法改正が反映されているか
      2. 2.1.2.労働基準法を遵守しているか
      3. 2.1.3.社内で実際に運用できる内容となっているか
      4. 2.1.4.36協定の締結
    2. 2.2.未払い残業の有無
    3. 2.3.労働保険・社会保険加入者
    4. 2.4.人事・労務トラブルの有無
    5. 2.5.人事政策
  3. 3.IPO準備中に人事が特に注意すべき反社会的勢力の排除とは
  4. 4.まとめ

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IPO準備に必要な人事・労務基盤とは

IPO準備に必要な人事・労務基盤とは

IPOを目指す場合、経営体制が整っているか、経営状況は堅調であるかを上場の際に審査されます。
しかし、ベンチャー企業やスタートアップでは、内部統制や社内規定などが整っていない状態で会社が成長している場合もあるでしょう。

統一的な基準で社員を評価し、実力に応じて報酬を適正配分できる制度や管理を整備し、尚且つ上場審査基準をクリアすることができる人事制度や労務管理体制がIPO準備企業に必要とされています。

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IPO準備に人事・労務の整備が必要な理由

IPO準備に人事・労務の整備が必要な理由は、法的リスクを抱えたままでは株主に企業価値を訴求することができないためです
ここでいう法的リスクとは、未払い残業代や社会保険への加入有無についてなどです。

また、上場の審査基準には「形式要件」と「実質審査基準」の2通りがあります。
「形式要件」の要件を満たしたうえで「実質審査基準」をクリアしなくてはいけません。

  • 形式要件:株主数、流通株式の時価総額、監査報告書といった比較的定量的な基準。

  • 実質審査基準:具体的に、企業が安定的に収益を確保できるか、企業内容の開示を適正に行っているか、公正な経営を行っているか、内部管理体制は整備されているかなど。

IPO後に安定した経営や運営を遂行できるか、また内部の管理体制が管理されており上場にふさわしい企業であることを示すためにも人事・労務の整備が必要となります。

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人事・労務の整備の仕方

今回テーマとしている「人事制度」「労務管理」も「実質審査基準」の中に入ります。
企業によっては、未整備な状態で運営していることが少なくありません。
では、それぞれにどのような整備が必要なのでしょうか? 

人事制度の整備の仕方

企業の体制により、人事や労務について経営者が一手に担っていたりすることが多数見られます。
また、採用を行なっている社員や担当者がいても、全ての人事について把握や管理している責任者の不在という問題がでてきます。

さらには、給与などの面でも、統一的な報酬テーブルや評価基準が整備されておらず、中途採用の場合は前職ベースで報酬を決定してしまうことが多いです。
このように給与のベース、テーブルがなくても運営できていることが問題です。

人事制度の整備の方法としては、経営者の独断で人事業務が遂行されるのではなく、組織として人事業務が遂行される人事制度の整備を行うことが必要です。
人事の責任者を立て、人材の採用から育成など人事基盤を築いていきます。
組織として社員や人材の管理や評価が行われることで公正かつ健全な経営につながります。

労務管理の整備の仕方

ベンチャーやスタートアップでは利益追求が優先されることにより、給与や労働条件の整備が不十分なことが多いです。
例えば、従業員が有給取得が規定数を上回っていない場合などがあります。

労務管理は特に従業員のモチベーションなどにつながる問題であり、適切でない管理が行われている会社は健全な運営がされていないとみなされます。
また、近年ではコンプライアンスを重視する風潮にあり、勤怠や給与の管理、各種保険への加入、安全衛生面の管理、ハラスメント対策などがよく見られています。

手作業による管理が難しい面もあるため、「労務管理システム」を導入し、効率的に管理することも視野に入れる必要があります。
労務管理システムを導入することで法令などに抵触していないかなどもチェックできるためコンプライアンスの遵守に役立ちます。

参考:IPO準備企業が上場審査に向けて整えるべき労務管理体制とは

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IPO準備企業が直面する人事・労務の懸念点 確認すべき事柄とは

IPO準備企業が直面する人事・労務の懸念点 確認すべき事柄とは

IPO準備企業における人事制度・労務管理は、上場の審査基準を参考にすることが効率的です。
上場審査では下記のような書類を参考にされます。

  • 人事政策や3年間の従業員の異動や出向者の状況を示すもの
  • 時間外及び休日労働の状況やその管理方法を示すもの
  • 労使協定の内容が示せる書類
  • 労働基準監督署による調査の状況や今後2年間の人員計画

参考にされる書類にも付随する確認すべき事柄を解説していきます。

就業規則・労使協定等の規則類

就業規則・労使協定等の規則類の中でも、特に重要なのが就業規則の整備です。
昨今は働き方改革などの影響で、きちんと規定が交わされていることが求められています。
就業規則の整備ができているか、以下をポイントでチェックすることで確認できます。

法改正が反映されているか

まず、最新の法改正に則った内容になっているかが重要です。
特に育児介護休業規定などには注意が必要です。

育児介護休業については昨今改訂が多い事項です。
就業規則を改訂している記録がないかなどを確認し、不安がある場合には専門家に相談することも視野に入れましょう。

労働基準法を遵守しているか

労働基準法に沿った内容になっている必要があります。
最新の労働基準法と照らし合わせて遵守できているか確認してください。

社内で実際に運用できる内容となっているか

実際に社内で運用できるものになっていなければ意味がありません。
業務などの実態に即した就業規則になっているか改めて確認しましょう。

36協定の締結

法定の労働時間を超えて労働させる場合や、法定の休日に労働させる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
この協定が規程されているのが労働基準法36条であることから、36協定と呼ばれています。

労働基準法違反とならないために必ず整備を行う必要があるので、改めて確認してください。

参考:IPO準備時に必要な社内規程(社内規定)の整備とは 作成の注意点を具体的に解説

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未払い残業の有無

未払い残業なども近年は厳しく取り締まりされる対象事項となっています。
「みなし残業」というケースもあるのではないでしょうか。
「残業代」は実際には時間に応じて支払う報酬のため、オーバーしている分は「未払い」という扱いになります。

もしこのような事があった場合、過去2年分の残業代を遡って支払いする必要があります。
IPO審査前に、未払い残業があった場合は支払いに資金を充てなければならないため、利益が確保できなくなり、IPO審査を遅らせなくてはならなくなる恐れもあります。

これらを防止するために日々の勤怠管理をしっかりと行いましょう。
残業がどのように行われているかを把握した上で、残業代の支払いを漏れなく行います。

例えば、社員の自己判断でサービス残業をしていても、雇用側には支払の義務が発生します。
このようなサービス残業や不必要な残業が行われないようにするためにも「業務可視化ツール」などを導入するのも良いでしょう。

労働保険・社会保険加入者

労働保険・社会保険の加入も重要な事項です。
労働者が適切に社会保険に加入をしているか、上場審査の際、対象となります。

1か月以上就労する見込みのあるパートタイマー及びアルバイトの人も条件に当てはまった場合には、社会保険の加入対象となります。

しかし、加入対象に該当するのに社会保険に加入していないというケースがあります。
この場合、法令違反になり、上場審査をパスすることはできません。
社会保険の加入対象者がきちんと加入しているか詳細を確認しましょう。

人事・労務トラブルの有無

長時間労働やセクハラ、メンタルヘルスのケアなどトラブルになりがちな案件はしっかりと発生した際の準備をしておく必要があります。

退職者からの訴えがあり、何らかの人事労務上のトラブルが生じ訴訟になると、上場審査から落ちる可能背も出てきます。
退職者の中で、トラブルになりそうな退職や解雇などがなかったか、どのような対処で、退職者も納得した結果での退職であったかなど時系列を整理し、詳細を確認、把握しておきましょう。

他にも、現在就業中でトラブルになっている人はいないか、労働条件など労働者側ときちんと共有、互いに同意した上での条件提示や労働になっているか確認しておくことが必須です。
労働組合などがある場合には、組合側との交渉など適切に取り交わしができているかなど、議事録を確認し準備しておきます。

このようなトラブル関係の内容については、会社の体質なども含めて常に見直しを図り、気を付けておくことが大事です。

人事政策

人事政策とは、人事部門が行う採用から人材管理、育成など人事業務における施策全般のことです。
IPO準備企業では、人事部門が経営者の独断で動いていることも多いので、人事主導で行われるようにすることが大事です。

IPO審査では「組織的運営」ができているかどうかも審査対象になっています。
組織的運営というのは特定のトップが個人で経営、運営するのではなく、社員を含め、会社全体で運営に携わっていることをいいます。

上場審査の対象になっていることからも、経営者・トップがカリスマになり、個人的に会社を運営していると判断されてしまうと審査が通りにくくなります。
社員が自らの判断を加えながら運営し、組織的運営がなされている事を示すことが重要です。

これは、その企業が長期的に見て持続的に成長するために重要なポイントです。
なぜならIPOは企業にとっては、ゴールではなく長期的な成長に必要な通過点であるという考え方に基づきます。

関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説

  IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説 IPO(上場)準備会社にとって、頭を悩ませるのが法令や上場規約などに設けられている社内体制の構築です。特に不可欠だとされている「内部統制」は、非上場時にはなかった体制を構築しなくてはならないケースも多く見られます。 そこで、上場に向けた内部統制の取り組みについて、問題となりがちな不明点を明らかにしていきます。 RISK EYES


IPO準備中に人事が特に注意すべき反社会的勢力の排除とは

「反社会的勢力」とは、一般に暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人を指します。

暴力団排除条例や社会的責任の観点から、新規取引先や、現在取引がある企業や個人については、反社会的勢力と関わりがないかをチェックする「反社チェック」を行う必要があります。
IPO審査の際も反社会的勢力の排除は重要な項目となっています。

また、従業員に対しても反社会的勢力との関わりを持っているものはいないか確認が必要です。
採用の際は、新卒、中途採用、パートやアルバイトなども含め、全ての方を対象にして反社チェックを行うべきです。

もし、内定を出してから反社会的勢力との関わりが露呈した場合は解雇することが非常に難しいです。
人事として、取るべき対策をきちんととっておきましょう。

参考:「採用」時のバックグラウンドチェックとは 必要性とメリット・デメリットについて解説

  「採用」時のバックグラウンドチェックとは 必要性とメリット・デメリットについて解説 企業規模を拡大していく中で、「採用」は切っても切り離せないものです。 最近では採用者の履歴書や職務経歴書、面接だけではわからない部分は「リファレンスチェック」や「バックグラウンドチェック」を行うことによって補う企業も増えています。 今回は反社チェックとも関係がある「採用」時のバックグラウンドチェックについて解説していきます。 RISK EYES


まとめ

今回は、IPO準備企業が整備すべき人事・労務の基盤と懸念点について具体例などを交えながら徹底解説しました。

IPOを成功させるには綿密な準備が必要になります。
体制の整備はすぐに行えるものではないので、日頃から基準や法の定めに従った組織づくりを意識的に行っていきましょう。

関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか? 上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説​​​​​​​
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?

​​​​​​​   IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか? 反社会的勢力排除の体制づくりについて解説 IPO準備企業にとって落とし穴になりかねないのが「反社チェック」です。近年は暴力団排除条例などで暴力団構成員は減少傾向にありますが、その分だけ目立たないようにうまく社会に溶け込んでいます。 例えば、まったく関わりがないと思われるような企業も、裏では反社会的勢力と密接な関係だったり、社員の中に紛れていたりもします。 そうした企業と取引などがあると、上場審査の際に引っかかって、それまでの準備が水の泡になってしまうことがあります。 そのため、IPO準備企業は、必ず反社チェックを行わなければなりません。今回はその方法やポイントなどを紹介いたします。 RISK EYES
  反社会的勢力に対応するためのガイドライン反社チェックの基準とは? 企業が安心して取引していくためには、反社会的勢力への対応が必要不可欠です。 2007年には『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(企業暴排指針)』が施行されるなど、近年反社会的勢力の排除を強化していく動きがみられています。 今回は、反社会的勢力への対応ガイドラインや反社チェックを実施する基準について解説していきます。 RISK EYES


佐々木 雄輝
佐々木 雄輝
2022年にソーシャルワイヤー株式会社に入社。 反社チェックサービス『RISK EYES』のマーケティング施策の企画立案を担当。
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