
eKYCの法改正で何が変わる? 2027年4月施行の本人確認ルールと社内対応
eKYCの法改正で、自社の本人確認フローをどこまで変えるべきか」と悩む担当者の方は多いのではないでしょうか。
犯罪収益移転防止法施行規則の改正により、2027年4月1日から、本人確認書類の画像や写しを用いる非対面の確認方法が原則として廃止・見直しとなり、対面でもICチップ情報の読み取りなどが原則として必要になります。
本記事では、改正の全体像と3つの変更点、業種別の影響、施行までの社内対応、反社チェックとの役割分担を整理します。
【参考】より深く知るための『オススメ』コラム
👉反社チェックは個人に対しても必要?チェックの方法と注意すべきことも解説
👉実質的支配者(UBO)とは?確認方法と判断基準、取引先調査の注意点を解説
▼反社チェックツール「RISK EYES」の無料トライアルはこちら
目次[非表示]
- 1.eKYCの法改正とは?犯収法施行規則の改正の全体像
- 1.1.現行のオンライン本人確認の主な方式(ホ・ヘ・ト・カ方式)
- 1.2.改正の背景:偽造書類やなりすましへの対策強化
- 1.3.施行スケジュール:携帯電話の非対面確認は施行済み、対面確認と犯収法の改正は2027年4月
- 2.eKYCの法改正で変わる3つのポイント
- 3.自社は対応が必要?業種別の影響と判断の基準
- 3.1.義務として対応する特定事業者(金融・不動産・貴金属・士業など)
- 3.2.犯収法の対象外でも見直したいケース(独自にeKYCを使うサービスなど)
- 3.3.よくある疑問Q&A:既存顧客の再確認は必要か、マイナンバーカードがない人・外国籍の人への対応は
- 4.eKYCの法改正の施行までに進める社内対応と、反社チェックとの役割分担
- 4.1.部門ごとの役割とスケジュール(法務・情報システム・カスタマーサポート・営業)
- 4.2.担当者がつまずきやすい点:手続き途中の離脱、スマホの対応状況、記録の保存、施行日前後の扱い
- 4.2.1.手続き途中の離脱
- 4.2.2.スマホの対応状況
- 4.2.3.記録の保存
- 4.2.4.施行日前後の手続きの扱い
- 4.3.本人確認だけでは防げないリスク:反社チェックとの連携
- 5.まとめ
- 5.1.施行までに今日から始められること
eKYCの法改正とは?犯収法施行規則の改正の全体像
eKYCの法改正とは、主に犯罪収益移転防止法(以下、犯収法)施行規則の改正により、オンラインと店頭の本人確認方法が見直されることを指します。
この章では、現行の方式、改正の背景、施行時期の順に全体像を確認します。
現行のオンライン本人確認の主な方式(ホ・ヘ・ト・カ方式)
eKYC(electronic Know Your Customer)は、口座開設や契約の際に、来店や書類の郵送をせず、オンラインで本人確認を完結させる仕組みです。
犯収法施行規則第6条には本人確認の方法が定められており、各方式は条文中の「ホ」「ヘ」などの記号で呼ばれています。2026年10月時点における、個人向けの主な方式は次の4つです。
・ホ方式:写真付き本人確認書類の画像と、本人の容貌(セルフィー)画像を送信する方法
・ヘ方式:写真付き本人確認書類のICチップ情報と、本人の容貌画像を送信する方法
・ト方式:本人確認書類の画像またはICチップ情報に、銀行等への顧客情報の照会、または顧客名義口座への振込とその入金を確認できる資料の送付などを組み合わせる方法
・カ方式:マイナンバーカードの署名用電子証明書などを使う公的個人認証(JPKI)による方法
なお、JPKIは旧称の「ワ方式」で紹介されることもありますが、現行の条文では「カ方式」、2027年4月1日の改正施行後は「ヌ方式」となります。ほかの方式も改正によって記号や内容が変わるため、社内資料では記号だけでなく、確認方法の内容と適用時点を併記しておくと、読み違いを防げます。
参考資料:金融庁「オンラインで完結可能な本人確認方法の概要」(現行の各方式)、TMI総合法律事務所の改正解説(改正前後の記号の対応を補足確認)
改正の背景:偽造書類やなりすましへの対策強化
改正の背景には、偽造・変造された本人確認書類で開設された架空・他人名義の預貯金口座などが、詐欺に悪用されている問題があります。書類の画像や券面の目視だけに頼らず、ICチップ情報や電子証明書を用いて、より確実に本人確認を行うことが重視されています。
政府が2025年4月22日に決定した「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」では、預貯金口座の開設時等や携帯電話契約時の本人確認について、非対面ではマイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、対面ではマイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを義務付ける方針が示されました。
ただし、これは政府の政策方針であり、改正後の確認方法がすべてJPKIに限定されるわけではありません。実際に利用できる方法や適用条件、施行日は、それぞれの改正後の施行規則に沿って確認する必要があります。
出典: 犯罪対策閣僚会議「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」(2025年4月22日決定、本文3~5頁)
施行スケジュール:携帯電話の非対面確認は施行済み、対面確認と犯収法の改正は2027年4月
本人確認方法の見直しは、携帯電話不正利用防止法施行規則と犯収法施行規則で、それぞれ段階的に進んでいます。
携帯電話不正利用防止法施行規則では、非対面の本人確認方法を見直す改正(令和7年総務省令第37号)が2025年4月1日に公布され、2026年4月1日に施行されました。
これとは別に、2026年2月27日公布の改正(令和8年総務省令第16号)では、追加回線契約等の簡易な本人確認方法が見直され、同年4月1日に施行されています。
また、対面でのICチップ情報の読み取りなどを定める改正(令和8年総務省令第94号)は、2026年7月27日に公布され、2027年4月1日に施行されます。携帯電話契約の本人確認については、非対面と対面、追加回線契約等で、改正内容と施行時期を分けて確認する必要があります。
出典:総務省「改正省令案に対する意見募集の結果の公表(2025年4月1日)」「同(2026年2月27日)」、「令和8年総務省令第94号」
犯収法施行規則では、非対面の本人確認方法を見直す改正が2025年6月24日に、対面の本人確認方法を厳格化する改正が2026年3月6日に公布されました。
施行日はどちらも2027年4月1日です。執筆時点の2026年10月から施行までは約半年であり、システム改修や社内規程の整備、担当者への周知に必要な期間を踏まえ、早めに準備を進める必要があります。
出典:警察庁「犯罪収益移転防止法の解説、パブリックコメント」「令和8年改正犯収法施行規則Q&A」
eKYCの法改正で変わる3つのポイント
ここでは、2027年4月1日に施行される犯収法施行規則の改正について、非対面、対面、法人・代理人の3つの場面に分けて整理します。
それぞれの場面で「使えなくなる方法」と「新たに求められる手順」を確認します。
非対面:画像・写しによる確認方法の見直しと、改正後に利用できる方法
2027年4月1日から、現行のホ方式(本人確認書類の画像と容貌画像を送る方法)は廃止され、書類の写しの郵送を用いる方法も原則として利用できなくなります。現行のト方式も、書類画像ではなくICチップ情報を使う方法へ移行します。
改正後は、JPKIや、ICチップ情報と容貌画像・銀行等への照会などを組み合わせる方法、カード代替電磁的記録を使う方法などが利用できます。
法令所定の公的書類の原本送付と転送不要郵便を組み合わせる方法も残ります。必要なシステム改修は採用方式によって異なるため、ベンダーと対応範囲を確認しましょう。
出典:警察庁「2025年6月24日公布の改正命令・新旧対照表」「同改正に係るQ&A」
対面:店頭や窓口でもICチップ読み取りが原則になる
2027年4月1日以降、マイナンバーカードや運転免許証などのICチップ付きの写真付き本人確認書類を提示して確認する方法では、原則としてICチップ情報を読み取り、画面に表示して券面と照合する必要があります。
パスポートに現在の住所の記載がない場合は、他の本人確認書類や補完書類で住所を確認します。ICチップのない写真付き書類では、法令所定の書類の提示と転送不要郵便による取引関係文書の送付を組み合わせる方法などがあります。利用できる書類や条件を整理し、窓口の案内や受付マニュアルを更新しましょう。
マイナンバーカードの読み取りには、デジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」を利用できます。ただし、運転免許証には対応していないため、取り扱う書類に合った機器やアプリの選定が必要です。
出典:警察庁「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.8・9・11・12)、デジタル庁「マイナンバーカード対面確認アプリ」
法人との取引・代理人による手続きで確認が必要なこと
法人の名称・所在地を確認する枠組みは維持されます。
ただし、2027年4月1日以降、国内法人について、本人確認書類の送付と転送不要郵便を組み合わせる方法では、写しではなく原本が必要になります。
登記情報や商業登記電子証明書による方法も利用できるため、すべての法人に原本郵送を求める改正ではありません。
来店した代表者や取引担当者についても、ICチップ付きの写真付き本人確認書類を提示して確認する場合は、ICチップ情報の読み取りが必要です。
委任代理人が手続きする場合は、採用する方法に応じて委任者と代理人の双方を確認し、双方のICチップ付き書類の提示による方法では、原則として両方を読み取ります。
出典:警察庁「2025年6月24日公布の改正命令・新旧対照表」(第6条第1項第3号ニ)、「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.23・35)
自社は対応が必要?業種別の影響と判断の基準
改正の影響を受けるかどうかは、業種だけでなく、対象となる業務・取引や本人確認を行う理由によって変わります。
ここでは、犯収法に基づく取引時確認義務がある場合と、同法の義務がなくても自主的にeKYCを利用している場合に分けて、判断の目安を示します。
義務として対応する特定事業者(金融・不動産・貴金属・士業など)
銀行・証券会社などの金融機関、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、司法書士・税理士などの特定事業者は、対象となる業務・取引について改正後の確認方法に対応する必要があります。なお、弁護士は日本弁護士連合会の会則に基づいて対応します。
ただし、すべての業務・取引が対象になるわけではありません。例えば、不動産では売買やその代理・媒介が対象で、賃貸業務とは区別されます。宝石・貴金属等を扱う古物商も、原則として現金200万円を超える売買契約などが対象です。自社の該当性は、犯収法第2条・第4条、施行令第7条等と所管官庁の資料を基に確認しましょう。
出典:警察庁「犯罪収益移転防止法の概要(2026年8月7日時点)」
犯収法の対象外でも見直したいケース(独自にeKYCを使うサービスなど)
犯収法に基づく取引時確認義務がなくても、マッチングサービスやSaaSなどで自主的にeKYCを利用している場合があります。ただし、適用法令は具体的な業務内容によって異なるため、他法令による年齢確認等の義務も含めて確認が必要です。
今回の改正が直接適用されなくても、ベンダーの提供方式や保守方針の変更によって対応が必要になる可能性があります。契約中のベンダーに提供継続の有無と移行計画を確認しましょう。
参考:警察庁「犯罪収益移転防止法の概要(2026年8月7日時点)」(犯収法の適用対象について。ベンダーへの確認は実務上の提案)
よくある疑問Q&A:既存顧客の再確認は必要か、マイナンバーカードがない人・外国籍の人への対応は
施行に向けて、社内や顧客から寄せられやすい疑問を3つ取り上げます。
Q. 既存顧客の本人確認はやり直す必要がありますか。
施行前に適法に取引時確認を行った顧客は、今回の改正だけを理由に確認をやり直す必要はありません。ただし、その後の取引では、確認記録の保存や同一顧客であることの確認などが必要です。なりすまし等が疑われる場合は、別途必要な確認を行います。
出典:警察庁「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.1)、「犯罪収益移転防止法の概要」(取引時確認済みの顧客等との取引)
Q. マイナンバーカードを持っていない顧客にはどう対応しますか。
運転免許証や在留カード等のICチップを用いる方法で対応できます。利用できない場合も、法令所定の公的書類の原本送付と、転送不要郵便による取引関係文書の送付を組み合わせる方法などがあります。利用できる書類や条件を確認し、所要時間と併せて案内しましょう。
出典:警察庁「2025年6月24日改正に係るQ&A」(No.1・2)
Q. 外国籍の顧客はどうなりますか。
国籍だけでなく、居住状況や書類の要件に応じて確認します。在留カード等のICチップを用いる方法のほか、住民基本台帳法の適用を受けない非居住外国人等は、一定の条件下で写真付き本人確認書類の提示による確認が可能です。旅券の証印等で対象者に該当することを確かめる必要があり、国外転出者に一律に適用されるわけではありません。
出典:警察庁「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.28〜32)
eKYCの法改正の施行までに進める社内対応と、反社チェックとの役割分担

法改正への対応は、情報システム部門だけの課題ではありません。
この章では、部門ごとの役割、つまずきやすい点、本人確認と反社チェックのつなぎ方を順に解説します。
部門ごとの役割とスケジュール(法務・情報システム・カスタマーサポート・営業)
準備工程の目安として、法務部門は2026年内に適用法令と現行の確認方法を整理し、規程・マニュアルの改訂案をまとめます。
情報システム部門は2027年1月までに方式と改修方針を固め、改修後、2〜3月に読み取り失敗や代理手続きなども含めてテストします。これらは法定期限ではなく、改修規模に応じた前倒しが必要です。
カスタマーサポート部門は、読み取り失敗や、採用方式に応じた暗証番号の問い合わせへの対応を準備します。
営業部門・店舗は案内資料を更新し、必要書類や代替手段を顧客に伝えます。経営層には費用と申込件数への影響の見込みを早めに共有し、予算を確保しましょう。
担当者がつまずきやすい点:手続き途中の離脱、スマホの対応状況、記録の保存、施行日前後の扱い
導入時に注意したい4つの点と、その対処法を紹介します。
手続き途中の離脱
カードの読み取りや、方式によって必要な暗証番号の入力で、顧客が手続きを中断する可能性があります。操作案内や再試行・代替手段への導線を用意し、完了率や問い合わせ内容を基に改善しましょう。
スマホの対応状況
カードを読み取る方式では、端末やOSによって利用できない場合があります。対応環境を確認し、店頭や郵送など、法令上利用できる代替手段を案内できるようにしましょう。
記録の保存
対面でのICチップ読み取りログの保存は、新たに義務付けられていません。ただし、法定の確認記録は引き続き作成し、契約終了日等から7年間保存する必要があります。ICチップ情報の画面印刷だけでは、本人確認書類の写しとして扱えない点にも注意しましょう。
出典:警察庁「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.39〜41)、「犯罪収益移転防止法の概要」(確認記録の作成・保存)
施行日前後の手続きの扱い
2027年4月1日以降の本人確認は、原則として改正後の方法で行います。ただし、施行前に旧規則に基づく書類の提示が済み、取引関係文書の送付だけが施行後になる場合は認められます。一方、書類の写しを施行前に発送しても、事業者の受領が施行後なら旧方式は使えません。手続きの進行状況に応じた切替ルールを整理しましょう。
出典:警察庁「2026年3月6日改正に係るQ&A」(No.2)、「2025年6月24日改正に係るQ&A」(No.4)
本人確認だけでは防げないリスク:反社チェックとの連携
本人確認は、申込者が名乗っている本人であることを確かめる手続きです。
反社会的勢力との関係や犯罪への関与は、本人確認だけでは判断できません。
実務では、本人確認で得た氏名や法人名などを反社チェックに活用し、同姓同名などの誤認に注意して情報を照合します。
懸念のある情報が見つかった場合は審査部門へ引き継ぎ、取引開始の可否を判断する流れを整えましょう。取引開始後も、リスクに応じて定期的に確認します。
まとめ

eKYCの法改正で押さえておくべき要点
今回の本人確認方法の見直しでは、ICチップ情報や公的個人認証の活用が進みます。
携帯電話不正利用防止法施行規則の非対面確認の改正は2026年4月に施行済みで、対面確認の改正と犯収法施行規則の対面・非対面確認の改正は2027年4月1日に施行されます。
対象となる業務・取引と現在の確認方法を照らし合わせ、必要な対応を進めましょう。
施行までに今日から始められること
まずは自社の本人確認方法を一覧化し、ベンダーへの提供方針の確認、必要な機器・システム改修の検討、社内規程の見直しに着手しましょう。
あわせて、本人確認と反社チェックを連携させる手順も点検します。
反社チェックツール「RISK EYES」は、Webニュース記事や新聞記事を活用した調査の効率化に役立ちます。
※本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。最新の法令・公的資料を確認のうえ、自社の業務に応じた対応をご検討ください。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
関連記事:反社チェックを自動化する方法はある?ツールの機能や注意点を解説











