
信用調査会社だけで反社チェックは十分?与信調査との違いと専用ツールの使い分けを解説
取引先の信用調査に帝国データバンクなどの信用調査会社を利用している場合、「企業信用調査を行っていれば、反社チェックもできているのでは?」と考える方もいるでしょう。
企業信用調査と反社チェックは、どちらも安全な取引を行うための確認ですが、主に見ているリスクや確認する情報は異なります。また、信用調査会社の中には、企業信用調査とは別にコンプライアンスチェックに活用できるサービスを提供している会社もあります。
そのため、「信用調査会社を利用しているから反社チェックは不要」「反社チェックツールがあれば信用調査は必要ない」と単純に分けることはできません。
本記事では、帝国データバンクの企業信用調査を例に、与信チェックと反社チェックの違い、取引先を確認する際のポイント、信用調査会社と反社チェック専用ツールの使い分けについて解説します。
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信用調査会社だけで反社チェックはできる?
企業信用調査と反社チェックでは確認する目的が異なる
信用調査会社を利用している場合でも、企業信用調査と反社チェックがまったく同じ情報を確認しているとは限りません。
企業信用調査では、企業の業績や財務状況、取引状況、支払能力などを確認し、「この企業と取引できるか」「どの程度まで取引できるか」といった判断につなげます。
一方、反社チェックでは、企業や人物について、反社会的勢力との関係や犯罪、不祥事、行政処分などのネガティブな公知情報を確認します。
つまり、企業信用調査では主に経済的な信用を、反社チェックでは主に社会的・法務的なリスクを確認します。
なお、反社チェックとコンプライアンスチェックも完全に同じ意味ではありません。コンプライアンスチェックは反社会的勢力との関係だけでなく、犯罪、制裁、マネー・ローンダリング、企業倫理上の問題など、より広い非財務リスクを対象とする考え方です。東京商工リサーチでも、取引先のリスク評価を「与信」と「コンプライアンスチェック」という2つの軸に分けています。
信用調査会社にもコンプライアンスチェックに活用できるサービスがある
「信用調査会社=与信調査だけ」と考えるのも適切ではありません。
例えば、帝国データバンクが提供するグローバル企業情報データベース「Orbis」では、企業概要や財務情報に加えて、株主・子会社・関連会社などのオーナーシップ情報や役員情報、コンプライアンス関連情報を確認できます。
さらに、取引先だけでなく最終親会社、役員、実質的所有者などについて、PEPs(公的要人)や制裁対象リストとの照合も可能です。
ただし、これは海外取引などを含むコンプライアンスチェックの機能であり、国内企業を対象とした反社チェックとすべて同じものではありません。
そのため、重要なのは「帝国データバンクを利用しているかどうか」ではなく、「現在契約しているサービスで何を確認できているか」です。
企業信用調査だけを利用しているのか、コンプライアンス関連情報まで確認できるサービスを利用しているのかを整理し、反社関係など確認できていないリスクがあれば、別の確認方法を検討する必要があります。
帝国データバンクの企業信用調査では何を確認する?

企業の経営状態を複数の情報から確認する
企業信用調査は、取引先がどのような企業なのかを把握し、取引判断に必要な情報を収集するために行われます。
帝国データバンクの企業調査では、企業概要だけでなく、登記・役員・大株主、代表者、系列・沿革、業績、取引先、銀行取引、資金状況、決算書、不動産登記など、複数の情報をもとに企業を評価します。
例えば、売上が伸びていても借入れが増えていたり、主要取引先への依存度が高かったりすれば、今後の支払能力に影響する可能性があります。企業信用調査では、一つの数字だけを見るのではなく、複数の情報を組み合わせて企業の状態を捉えることが重要です。
与信管理では「支払えるか」「どの程度まで取引できるか」を判断する
商品やサービスを提供してから代金を受け取るまでには、取引先が倒産するなどして代金を回収できなくなるリスクがあります。
こうした信用リスクを抑えるために、取引先の状態を確認し、取引可否や与信限度額などを設定するのが与信管理です。安全性が高いと判断した企業には大きな信用枠を設定し、リスクが高い企業については信用枠を小さくするといった調整を行います。
また、財務状況に懸念がある場合でも、必ずしも取引を中止するとは限りません。
取引額を抑える、前払いに変更する、支払サイトを短縮する、保証を設定するといった方法によって、未回収リスクを抑えながら取引を続けることもできます。
つまり、企業信用調査・与信管理では、単に「良い会社・悪い会社」を分けるのではなく、相手の経済的な信用状態を把握し、どのような条件なら取引できるかを判断することが重要です。
ただし、企業の財務状態が良好で支払能力が高いからといって、反社会的勢力との関係や過去の不祥事など、別のリスクも存在しないとは限りません。
関連記事:安心して取引先するために、企業調査・リスク管理を見直そう
与信チェックと反社チェックは何が違う?
確認するリスクと判断軸が異なる
与信チェックと反社チェックの違いを整理すると、次のようになります。

与信チェックでは「支払えるか」を中心に確認し、反社チェックでは「関係を持つことに重大な懸念がないか」を確認します。
この違いを理解しておくと、「与信調査をしているから反社チェックも完了している」と考えることの問題点が分かりやすくなります。
例えば、十分な売上や資産を持ち、支払いにも問題がない企業であっても、過去に重大な不祥事を起こしていたり、代表者に反社会的勢力との関係を疑わせる情報が存在したりする可能性はあります。逆に、ネガティブな報道があったからといって、直ちに支払能力がない企業だと判断できるわけでもありません。
経済的な信用と社会的・法務的なリスクは、異なる情報を使って確認する必要があります。
問題が見つかった後の対応にも違いがある
与信上の懸念は取引条件でコントロールできる場合がある
財務状態に不安がある場合は、そのリスクの程度に応じて取引条件を見直します。
例えば、1,000万円まで認めていた取引枠を500万円に縮小したり、掛け取引から前払いへ変更したりすることで、万が一相手企業が倒産しても自社の損失を抑えることができます。
このように、与信管理ではリスクがあるから直ちに取引をやめるのではなく、リスクの大きさを把握し、許容できる範囲に調整するという考え方が基本になります。
〈h4〉反社情報が見つかった場合は事実関係と関係性を確認する
反社チェックでネガティブな情報が見つかった場合は、検索結果だけを見て直ちに取引不可と判断するのではなく、まずその情報が本当に対象企業・人物に関するものなのかを確認します。
同姓同名の別人である可能性や、記事に名前が出ていても事件への関与者ではない可能性もあるためです。
対象者との同一性、記事が掲載された時期、どのような立場で関係しているのかなどを確認し、重大な懸念がある場合には、社内の法務・管理部門などへエスカレーションします。そのうえで、自社の規程や契約内容、事実関係に応じて、取引継続、取引停止、契約解除などを検討します。
そのため、反社チェックでは「情報を検索すること」だけでなく、「ヒットした情報をどう確認し、どのように判断するか」まで含めて体制を整えることが重要です。
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信用調査会社と反社チェック専用ツールはどう使い分ける?

財務が健全でも別の取引先リスクが存在する
企業の業績や財務内容だけでは、取引先に関するすべてのリスクを把握することはできません。
反社会的勢力は、組織の実態を隠したり、一般的な企業活動を装ったりする場合があります。そのため、通常の企業として事業を行っているように見えても、反社会的勢力との関係が表面からは分からないケースがあります。法務省も、企業側が暴力団関係企業等と知らずに取引してしまう可能性があることを指摘しています。
また、企業を取り巻くリスクは、財務・反社だけではありません。取引先管理では、コンプライアンス、不正、情報セキュリティ、サプライチェーンなど、さまざまな非財務リスクも考える必要があります。
そのため、「一つの調査ですべて確認する」というより、確認したいリスクごとに必要な情報を組み合わせるという考え方が適しています。
確認対象は会社だけとは限らない
反社チェックでは、取引先の法人名だけでなく、代表者や役員などの人物を確認する場合があります。
代表者・役員まで確認する
会社そのものにネガティブな情報がなくても、代表者や役員について過去の事件・不祥事などが報じられている可能性があります。
特に、重要な取引や高額な取引などでは、法人名だけでなく、実際に経営に関与する人物まで確認する運用も考えられます。
資本関係や実質的支配者まで確認する
企業同士の資本関係が複雑な場合は、表面上の取引先だけを見ても、誰が実質的に企業を支配しているのか分かりにくいことがあります。
海外取引やAML/CFTなどでは、取引先だけでなく、関連会社や実質的支配者、最終親会社などまで確認する考え方もあります。帝国データバンクのOrbisでも、最終親会社や実質的所有者まで含めたコンプライアンスチェックに対応しています。
ただし、すべての取引先に同じ深さの調査を行う必要があるとは限りません。取引額、取引期間、業界、自社への影響度などを踏まえて、確認対象に濃淡をつけることが現実的です。
検索できる情報だけでなく反社チェックの運用まで考える
反社チェックの件数が少なければ、担当者がGoogleなどで1件ずつ検索し、結果をExcelに記録する方法でも対応できる場合があります。
しかし、毎月数百件の取引先を確認するようになると、検索そのもの以外の作業も増えていきます。
担当者によって検索するキーワードが異なる、同姓同名の別人を判断するのに時間がかかる、確認した記事のURLを保存し忘れる、判断理由が残っていない、取引開始後の再チェック時期が決まっていない、といった問題が起こりやすくなります。
そこで、信用調査会社や反社チェックツールを選ぶ際は、「どんなデータを持っているか」だけでなく、検索・確認・判断・記録・再チェックまでをどのように運用できるかを見ることも大切です。
取引開始後の変化にも備える
取引開始時に問題がなくても、取引先の状態は変化します。
業績が悪化することもあれば、代表者や役員、株主が変わることもあります。取引開始後に行政処分や不祥事が発生する可能性もあります。
そのため、取引開始時の確認だけで終わらせず、重要度の高い取引先については定期的に再確認する仕組みを設けるとよいでしょう。
取引先すべてを同じ頻度・同じ深さで確認する必要はありません。取引額やリスクの高さなどに応じて、重点的に確認する企業と簡易的に確認する企業を分けることで、限られたリソースを効率的に配分できます。
反社チェックツールを取引先管理に活用するには
企業信用調査と反社チェックは役割を分けて活用する
反社チェック専用ツールは、企業信用調査を置き換えるものではありません。
例えば、企業信用調査によって財務や業績、経営状態、支払能力などを確認し、反社チェックによって企業や人物に関するネガティブな公知情報を確認するというように、それぞれを目的に応じて組み合わせることができます。
すでに帝国データバンクなどの信用調査会社を利用している場合は、新たなサービスを追加する前に、まず現在の確認範囲を棚卸ししてみましょう。
現在のサービスで財務・業績以外に何を確認できるのか、反社・ネガティブ情報をどの情報源で確認しているのか、法人だけでなく代表者なども確認しているのか、結果や判断理由を残せているのか、取引開始後の再チェック方法が決まっているのか、といった点を整理します。
不足している部分が明確になれば、反社チェック専用ツールを導入する目的もはっきりします。
RISK EYESで検索・判断・記録の業務を効率化する
RISK EYESでは、法人名や人名を対象に、新聞、Webニュース、ブログ・掲示板、行政処分情報など複数の情報源から反社・ネガティブ情報を確認できます。また、制裁リストなど海外リスク情報の確認にも対応しています。
複数の対象をまとめて確認する一括検索や、検索履歴の保存などを活用することで、担当者が一件ずつ検索・保存する作業を減らすことも可能です。
特に取引先が増えた場合は、検索そのものの速さだけでなく、同じ基準で確認できること、確認した証跡を残せること、必要なタイミングで再確認できることが重要になります。
反社チェックを「検索作業」として終わらせず、取引先リスク管理の一つの業務として運用できる体制を整えていきましょう。
まとめ|信用調査と反社チェックは目的に応じて組み合わせよう
企業信用調査と反社チェックは、どちらも取引先のリスクを把握するために重要ですが、確認する目的は異なります。
企業信用調査では、財務、業績、経営状態、支払能力などを確認し、「支払えるか」「どの程度まで取引できるか」といった経済的な信用を判断します。
一方、反社チェックでは、反社会的勢力との関係や犯罪、不祥事、行政処分などの公知情報を確認し、取引関係を持つことに重大な懸念がないかを判断します。
また、帝国データバンクのように、企業信用調査だけでなく、海外企業や実質的所有者、制裁対象などのコンプライアンスチェックに活用できるサービスを提供している信用調査会社もあります。
そのため、「信用調査会社か、反社チェック専用ツールか」という二者択一で考える必要はありません。
現在利用しているサービスで何を確認できているのか、反社・コンプライアンス面ではどの情報が不足しているのか、誰まで確認するのか、結果をどのように記録するのか、取引開始後にどのように再確認するのかを整理し、必要な情報源やツールを組み合わせることが重要です。
経済的な信用と社会的・法務的なリスクの両面から取引先を確認し、自社の取引内容やリスクに合った管理体制を整えていきましょう。











