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与信枠(与信限度額)とは?設定・算出方法を解説 

企業を運営するうえで欠かせない商取引は、常にリスクがつきまといます。
また、企業間取引において損益リスクに直結するのが与信で、与信とは取引先に対して「信用を与えること」を意味しています。

特に、信用取引(掛売取引)がほとんどであるBtoB企業においては、取引先に対する与信管理が自社の企業の命運を左右することもあります。

与信枠(与信限度額)を設定することでリスクを低減することができますが、何を基準に設定すればよいかわからない方も多いでしょう。
この記事では、与信枠の意味や重要性について解説し、その設定方法と算出方法も紹介します。

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目次[非表示]

  1. 1.与信枠とは?
  2. 2.与信枠(与信限度額)を設定する重要性
  3. 3.与信枠(与信限度額)設定方法
    1. 3.1.まずは与信取引の基準を決める
    2. 3.2.取引先の情報を収集する
    3. 3.3.与信枠(与信限度額)を設定する
  4. 4.与信枠(与信限度額)の算出方法
    1. 4.1.平均的な取引単価を基準に算出する
    2. 4.2.自社の売掛債権全体を基準として算出する
    3. 4.3.自社の純資産を基準として算出する
  5. 5.与信枠(与信限度額)の見直しをする
    1. 5.1.与信枠(与信限度額)は必要に応じて見直しが必要 
    2. 5.2.与信の管理は企業のリスク管理にもつながる
  6. 6.まとめ

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与信枠とは?

与信枠とは?

「与信枠」とは「与信限度額」とも言われ、取引先ごとに定めた与信の限度のことです。
身近なものでは、金融機関や消費者機関による融資枠や、クレジットカード会社の利用可能額枠が、取引先の与信枠に当たります。

与信枠は、取引先の信用状況や取引実績、取引内容などを勘案し決定します。
基本的に与信枠は取引開始時に設定するものですが、取引の増額時や取引先の状況変化によって定期的に見直しをする必要があります。

また、与信枠を設定したら、その範囲を超える取引は行わないのが原則です。

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与信枠(与信限度額)を設定する重要性

与信枠(与信限度額)を設定する重要性

与信枠を設定する1番の理由は、「取引先から代金を回収できないリスクを回避する」ことです。
例えば、企業間で商取引を行う際、商品を納品してからその対価が支払われるまでにタイムラグが発生するため、納入先の経営状況が悪化した場合や、最悪の場合倒産などによって代金を回収できないというリスクがあります。

与信審査を行うことで、取引先の支払い能力を見極め、確実に代金が回収できると予測できる範囲で与信枠を設定することが、企業のリスクを軽減するために重要になります。
また、重要な取引先と共に安定した成長を遂げるためにも、与信枠の設定は重要になります。

例えば、パソコンを販売するA社が、システムを供給するB社と与信取引を行っていたとします。
ある日、B社が革新的なシステムの開発に成功した場合、A社は優先的にその技術を活用したいと考えるのが当然の経営判断です。

その際、これまでの与信枠を遵守していると、新システムの供給量が足りず、B社は競合他社に新システムを販売するかもしれません。
そこでA社はB社に対する与信枠を見直して、B社に対して資金を提供する必要があります。

与信枠は遵守しないと意味がありませんが、ビジネスチャンスがあれば、設定額を変更するなどといった柔軟な運用が企業成長のカギになります。

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与信枠(与信限度額)設定方法

与信枠(与信限度額)設定方法

与信枠の設定は大きく分けて以下の3つの流れになります。 

  • 与信取引の基準を決める 
  • 取引先の情報を収集する 
  • 与信枠を設定する

順番に解説していきます。

まずは与信取引の基準を決める

与信枠の設定には、信用度の格付けをするのが一般的な方法です。
格付けの基準は企業によって異なりますが、基本的には取引先の支払い能力で判断されます。

例えば、以下のような格付けの基準があります。

参考:一般社団法人東京都中小企業診断士協会「焦付きを極小化するための与信限度額の設定」 

この基準は調査会社が発行している標準財務指標などを参考にして、与信管理の際に重要な勘定や指標を抜粋し、取引先の業界の平均金額や財務指標の高低に準じて点数をつけます。

ただし、財務状況や収入といった定量データだけでは確実な判断ができないこともあるため、親会社や経営者の能力といった定性項目を鑑みて点数を足し引きし、最終的に調整して信用力を判定し、ランク付けをします。
格付けごとにそれぞれ割合を決めておき、与信限度額を設定する際に用います。

取引先の情報を収集する

取引先の状況を正しく判断するために、情報収集は必須になります。
しっかりと与信調査を行い、取引先の資産・財務状況、業績及び支払い能力を見極める必要があります。

与信調査の方法は、①自社の社員から情報収集する社内調査、②調査対象に直接接触して情報を得る直接調査、また、③インターネットの公開情報や法務局で取得する商業登記簿謄本や不動産登記簿謄本などを調べる外部調査、④信用調査会社に依頼する依頼調査の主に4つがあります。

リスクを減らすためにも、最低限の与信調査を行うのが良いでしょう。

与信枠(与信限度額)を設定する

社内の格付け表に当てはめた結果に基づいて、与信枠を設定します。
与信枠の詳しい算出方法については次章で解説しますが、社内格付けの評価が好ましくなく、与信リスクが高い企業に関しては、債券回収が遅延した場合の対応についても検討しておくのが好ましいです。

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与信枠(与信限度額)の算出方法

与信枠(与信限度額)の算出方法

与信枠の算出は何を指標とするかによっていくつかの方法がありますが、ここでは主な3つの方法を紹介します。

平均的な取引単価を基準に算出する

この方法は、初めて与信管理を行う中小企業やスタートアップ企業でも取り入れやすい、簡潔で現実的な方法です。
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まずは、1取引先の取引単価を算出し、その金額に売掛金の回収サイト、つまり商品を販売・納品した後でその代金が支払われるまでの期間を掛け合わせ、「売掛債権の平均単価」を基準として社内の格付け表に当てはめる方法です。

1取引先当たりの平均単価を基準にするため、実際の取引実績を基にした現実的な与信枠の設定が可能になります。

例えば、1取引先あたりの平均単価が60万円で、支払いサイトが月末締め翌月末払いの場合は、60万円×2か月=120万円となり、これが売掛債権の平均単価になります。
この金額を標準として、社内格付けに当てはめ、社内ごとに与信枠を決定します。

具体的な金額の例としては、社内格付けがAの場合は1000万円、Bの場合は500万円、Eの場合は10万円などの金額を設定するということです。

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自社の売掛債権全体を基準として算出する

自社の売掛金や受取手当などの売掛債権全体に対して、一定割合をかけ、格付けウエイトを加味して与信枠を設定する方法です。
なお一定割合とは、取引先に貸し倒れが発生した場合、影響を一定割合に抑えるために設定されているもので、多くの企業で10%程度に定められています。

与信枠=自社売掛債権全体×一定割合(約10%)×格付けウエイト


例えば、自社の売り上げ債権が1000万円、取引先の格付けランクが前述の表でBランク(格付けウエイト1.50)だった場合は以下のような計算になります。

1000万円×10×1.50=1億5000万円

この場合は、この1億5000万円が与信枠となります。
もし格付けランクがDランクだった場合は、与信限度額が1000万円×10×0.50=5000万円になり、1億円の差があることから、信用による格付けランクが与信枠の設定に大きく影響することがわかります。

この方法は、売掛債権が一定割合を超えないような仕組みになっており、取引先が多く、売掛債権の合計金額が大きくなりやすいような企業が利用しやすい方法です。

自社の純資産を基準として算出する

社内の格付けランクに応じて、自社の純資産のうち何割までを与信枠とするかと算出する方法です。
例えば社内格付けランクがAの場合は純資産の10%、Eの場合は3%までを与信枠とするなどといった方法です。

この方法は自社の企業体力以上の取引は行わないので、連鎖倒産のリスクを抑えられることがメリットで、保守的に経営する場合はフィットするでしょう。
ただし、売り上げがスピーディーに成長した場合でも、純資産の拡大はスピードが遅いことも多く、成長率が下がってしまうというデメリットがあります。 

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与信枠(与信限度額)の見直しをする

与信枠(与信限度額)の見直しをする

与信枠は一度設定したら終了ではありません。
与信管理の見直しが必要なのと同じように、与信枠も最低限の見直しが必要です。

既存取引先との取引が好調で与信枠の上限を引き上げたい場合や、逆に支払いの遅延が発生したり、取引先企業の信用が低下したりした際は、与信枠を引き下げる見直しも必要です。

与信枠(与信限度額)は必要に応じて見直しが必要 

定期的に与信リスクを調査することだけでなく、取引する商品や取引金額が増加する場合や、社会情勢の変化によって取引先および自社の経営状況が変わった場合など、都度見直しをして、必要に応じて与信枠を設定し直すことが大切です。

長くても1年、企業によっては3か月や6か月のペースで頻繁に更新するところもあります。

与信の管理は企業のリスク管理にもつながる

リスクの軽減のため与信枠を設定することの大切さを解説してきましたが、そもそも与信管理を行うことが企業リスクの管理にもつながります。
与信管理を行う目的は、与信枠を設定する目的とほとんど一緒で、「貸し倒れのリスクを低減し、利益を守ること」です。

万が一取引先が倒産してしまった場合貸し倒れが発生し、これによる損失が発生すると、本来企業に入るべきだった利益がなくなってしまいます。
さらに貸し倒れの金額が大きい場合、自社の資金繰りが厳しくなり、企業の存続にまで影響する可能性もあります。

また、取引先が貸し倒れを起こした場合、きちんと与信管理をしていない企業とみなされ、企業の信用問題にも影響しかねません。
このようなリスクを避けるためにも、与信管理は重要な項目です。

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まとめ

 与信枠(与信限度額)は、「取引先から代金を回収できないリスクを回避する」ために設定します。
与信枠の算出方法はいくつかありますので、自社にあった方法で与信枠を設定するのが良いでしょう。

また、与信枠は一度設定したらよいものではなく、必要に応じて見直しが必要です。
与信に関する項目は、企業リスクの管理において重要な部分です。

安定した企業活動を続けていくために、与信枠の設定と見直し、与信管理はしっかりと行いましょう。

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RISK EYES編集部
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反社チェックツール「RISK EYES」のブログ編集部です。反社関連の情報だけでなく、与信やコンプライアンス全般、IPO準備などについても執筆しています。
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