
雇用期間に関する法律上のルールとは?有期雇用契約のポイントや注意点を解説
雇用契約には、有期・無期の違いがあり、特に有期雇用契約では契約期間や更新ルールを理解することが重要です。
法律により、最長契約期間の制限や、契約更新の判断基準、雇い止めのルールが定められています。
この記事では、有期雇用契約を結ぶ際のポイントや注意点を解説し、適切な雇用管理を行うためのポイントを紹介します。
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目次[非表示]
- 1.雇用期間とは?
- 1.1.雇用期間の設定が必要な有期雇用契約
- 1.1.1.有期雇用契約の種類
- 1.2.雇用期間と試用期間の違い
- 2.雇用期間の上限と最短
- 2.1.有期雇用の上限は原則で3年、一部特例5年
- 2.2.有期雇用の最短は決まりがない
- 3.雇用期間に関する法律上の3つのルール
- 3.1.従業員は通算5年で無期転換へ申し出が可能
- 3.2.雇い止めルールの明文化義務
- 3.3.不合理な労働条件の禁止
- 4.有期雇用契約の雇用期間を設定する際のポイント
- 4.1.期間と更新の有無、判断基準を明確にする
- 4.2.労働条件の明示事項をもれなく提示する
- 4.3.雇い止めは事前に予告する
- 4.4.従業員の希望に応じて柔軟に期間を
- 4.5.期間中の解雇(退職)は原則認められない
- 5.雇用期間を定めた労働契約を結ぶ際の注意点
- 5.1.契約期間について可能な限り配慮
- 5.2.更新しない場合は「雇い止め予告」が必要
- 5.3.求められた場合は理由の明示が必要
- 5.4.雇い止めが無効となる場合もある
- 6.まとめ
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雇用期間とは?
雇用期間とは、労働契約において労働者が企業と雇用契約を結ぶ期間のことを指します。
雇用契約には「有期雇用契約」と「無期雇用契約」があり、有期雇用契約では契約期間が明確に定められています。
一方、無期雇用契約では期間の定めがなく、定年や退職などの理由がない限り雇用が継続されます。
雇用期間の設定が必要な有期雇用契約
有期雇用契約は、一定の期間に限定して労働者を雇用する契約形態です。
企業は業務の繁忙期や特定のプロジェクトのために有期雇用契約を活用することが多く、契約期間が満了すると雇用契約が終了します。
ただし、契約更新の可能性がある場合は、事前に更新基準を明示することが求められます。
有期雇用契約の種類
有期雇用契約には、さまざまな雇用形態があります。
代表的なものとして以下のような種類が挙げられます。
- 契約社員:企業と一定期間の契約を結び、フルタイムまたはパートタイムで働く形態です。
契約期間は通常3年以内ですが、専門的な知識を持つ場合は最長5年まで可能です。 - パート・アルバイト:短時間勤務を前提とした雇用形態で、学生や主婦などが多く利用します。
契約期間は数ヶ月から1年程度が一般的です。 - 派遣社員:派遣会社と契約を結び、派遣先企業で働く形態です。
- 契約期間は派遣先の業務内容に応じて決定されます。
- 嘱託社員(定年後の再雇用):定年退職後に再雇用される形態で、契約期間は1年ごとに更新されることが多いです。
- 高度専門職契約社員:医師、弁護士、技術者など、高度な専門知識を持つ労働者が対象となり、契約期間は最長5年まで認められます。
これらの雇用形態は、業務内容や労働者の希望に応じて選択されます。企業は契約期間や更新の有無を明確にし、適切な雇用管理を行うことが重要です。
雇用期間と試用期間の違い
雇用期間と試用期間は混同されがちですが、目的が異なります。
試用期間は、企業が労働者の適性を判断するための期間であり、通常は数ヶ月程度に設定されます。
試用期間中は、労働者の職務遂行能力や職場適応性を評価し、企業が本採用の可否を決定します。
一方、有期雇用契約は契約期間が明確に定められており、試用期間とは異なり、契約満了時に雇用契約が終了するのが原則です。
雇用期間の上限と最短
有期雇用契約は、契約期間を定めて雇用する形態であり、法律によってその上限が決められています。
契約期間の長さは、労働者の雇用安定や企業の業務運営に影響を与えるため、適切な設定が求められます。
有期雇用の上限は原則で3年、一部特例5年
労働基準法では、有期雇用契約の上限を原則3年と定めています。
これは、長期間の有期契約が労働者の雇用不安を招くことを防ぐためです。
ただし、以下の特例に該当する場合は、最長5年まで契約期間を設定することが可能です。
- 高度な専門知識を持つ労働者(医師、弁護士、技術者など)
- 満60歳以上の労働者
- 特定のプロジェクトや業務の完了に必要な期間を定める場合
これらのケースでは、労働者の専門性や雇用の継続性を考慮し、長めの契約期間が認められています。
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有期雇用の最短は決まりがない
一方で、有期雇用契約の最短期間については法律上の規定がありません。
企業と労働者の合意によって自由に設定することができ、1週間や1ヶ月といった短期間の契約も可能です。
ただし、労働契約法では、労働者の保護の観点から「必要以上に短い契約期間を設定し、反復更新することを避けるよう配慮する」ことが求められています。
関連記事:トライアル雇用とは?雇用の流れやメリット・デメリットを解説
雇用期間に関する法律上の3つのルール
有期雇用契約は、契約期間が定められているため、労働者の雇用の安定性に影響を与えることがあります。
そのため、法律では労働者の権利を守るためのルールが定められています。
ここでは、特に重要な3つのルールについて解説します。
従業員は通算5年で無期転換へ申し出が可能
労働契約法では、有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期雇用契約への転換を申し出ることができます。
このルールは、長期間にわたって有期契約を繰り返し更新される労働者の雇用を安定させるために設けられました。
企業は、労働者からの申し出があった場合、無期雇用契約への転換を拒否することはできません。
ただし、専門的な知識を持つ労働者や定年後の再雇用者など、一部の特例に該当する場合は、無期転換の対象外となることがあります。
企業は、契約更新の際に労働者の通算契約期間を確認し、適切な対応を行うことが求められます。
関連記事:雇用形態とは?保険の適用範囲や管理のポイントを解説
雇い止めルールの明文化義務
有期雇用契約では、契約期間の満了時に契約が更新されない場合があります。
この「雇い止め」に関する対応について、企業は適切なルールを定め、労働者に説明する義務を負います。
特に、労働者が契約の更新を期待できる状況で雇い止めが実施された場合、不当な処遇として問題視される可能性があります。
企業は、契約締結の時点で更新基準を明確にし、契約満了時にはその基準に従って更新の可否を適正に判断する必要があります。
また、雇い止めを行う際には、労働者に対して事前に通知し、その理由を適切に説明することが求められます。
不合理な労働条件の禁止
有期契約の労働者に対して、正社員と比べて不合理な労働条件を設定することは法律で禁止されています。
同じ業務を担当するにもかかわらず、著しく低い賃金や不利な待遇が適用されるケースは問題とされます。
労働契約法では、有期雇用労働者の待遇が合理的であるかどうかを判断するための基準が設けられています。
企業は、労働者の職務内容や責任の程度を考慮し、適正な労働条件を設定する必要があります。
また、労働者が自身の待遇に不満を感じた場合は、企業側が相談窓口を設置し、適切な対応を行うことが望まれます。
関連記事:労働基準法における休憩時間の原則や注意点とは?違反時の罰則についても解説
有期雇用契約の雇用期間を設定する際のポイント
有期雇用契約を結ぶ際は、契約期間の設定や更新のルールを明確にし、労働者の権利を守ることが重要です。
契約期間の長さや更新の可否は、雇用の安定性に影響を及ぼすため、慎重な決定が必要になります。
ここでは、契約期間の設定に関する重要なポイントを解説します。
期間と更新の有無、判断基準を明確にする
有期雇用契約では、契約期間の長さや更新の有無を明確にすることが重要です。
契約締結時に、契約満了後の更新の可否を決め、それを労働者に説明することで雇用に関する不安を軽減できます。
例えば、業務の継続性や労働者の勤務成績を更新判断の基準とすることが一般的です。
労働条件の明示事項をもれなく提示する
契約締結時には、労働条件通知書を交付し、労働時間や賃金、業務内容などの詳細を労働者に伝える必要があります。
特に、有期雇用契約では契約期間、更新の有無、更新基準を明記することが重要です。
これにより、労働者は自身の雇用契約の内容を正しく理解し、安心して勤務できます。
関連記事:雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?必須項目や2024年法改正に伴う変更点について解説
雇い止めは事前に予告する
契約の更新を行わない場合、企業は契約満了の30日前までに労働者へ通知する義務があります。
これは、労働者が次の雇用先を探す時間を確保するために必要な措置です。
また、雇い止めの理由を明確に伝えることで、労働者の納得感を高めることができます。
従業員の希望に応じて柔軟に期間を
契約期間の長さは、業務の内容や労働者の希望に応じて柔軟に設定することが望ましいです。
例えば、短期間の契約を希望する場合は数ヶ月単位の契約、長期間の安定した雇用を希望する場合は1年以上の契約を設定するなど、労働者のニーズに応じた対応が必要です。
期間中の解雇(退職)は原則認められない
有期雇用契約では、契約期間中の解雇は原則として認められません。
企業が労働者を解雇する場合は、客観的に合理的な理由がある場合に限り、解雇が認められます。
例えば、重大な規律違反や職務遂行能力の著しい欠如などが該当します。
一方で、労働者が退職を希望する場合も、契約満了までの勤務が基本となります。
関連記事:解雇するための条件とは?主な解雇理由や解雇後の注意点についてわかりやすく解説
雇用期間を定めた労働契約を結ぶ際の注意点
有期雇用契約を締結する際には、契約期間の設定や更新のルールを明確にし、労働者の権利を守ることが重要です。
契約期間の長さや更新の有無は、労働者の雇用の安定性に影響を与えるため、慎重に決定する必要があります。
ここでは、特に注意すべきポイントを4つ解説します。
契約期間について可能な限り配慮
契約期間の設定は、雇用の安定性に影響を与えるため、企業は可能な限り労働者の希望を考慮することが重要です。
特に、契約を繰り返し更新する場合は、業務の継続性を考慮し、適切な契約期間を設定する必要があります。
更新しない場合は「雇い止め予告」が必要
契約更新をしない場合、前述の通り、企業は契約満了の30日前までに労働者へ通知する義務があります。
これは、労働者が次の雇用先を探す時間を確保するための措置です。
また、労働者が更新を希望する場合、企業は合理的な理由を説明し、不当な雇い止めとならないよう注意を払う必要があります。
関連記事:直接雇用のメリットとは?間接雇用との比較や3年ルール、企業の義務についても解説
求められた場合は理由の明示が必要
労働者が契約更新を希望した場合、企業は更新しない理由を明示する必要があります。
これは、労働者の納得感を高めるために重要なポイントです。
例えば、業務縮小や業務終了などの正当な理由がある場合は、具体的な説明を行うことでトラブルを防ぐことができます。
雇い止めが無効となる場合もある
契約更新を期待できる状況で雇い止めが行われた場合、無効と判断されることがあります。
労働者が契約更新を前提として勤務していた場合、一方的な契約終了は無効とされる場合があります。
特に、過去に何度も契約更新が行われていた場合、企業が合理的な理由なく契約を終了することは認められない可能性があります。
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まとめ
有期雇用契約では、契約期間や更新ルールを明確にし、労働者の権利を守ることが重要です。
通算5年で無期転換が可能であり、雇い止めの予告義務もあります。
また、不合理な労働条件の禁止や期間中の解雇制限など、法律に基づいた適切な契約管理が求められます。
企業は法令を遵守し、労働者の希望を考慮しながら契約を結ぶことで、働きやすい環境を整えることが大切です。
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