
デューデリジェンスとは?種類・目的・費用・注意点まで徹底解説
M&Aや投資の場面で欠かせない「デューデリジェンス」。
企業の財務や法務、事業の実態を多角的に調査し、リスクを見極める重要なプロセスです。
この記事では、デューデリジェンスの基本的な役割や企業価値評価との違い、目的、種類ごとの具体的内容、費用相場、そして実施時の注意点までを徹底解説します。
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目次[非表示]
- 1.デューデリジェンスとは?
- 1.1.M&Aにおける役割
- 1.2.企業価値評価(バリュエーション)との違い
- 2.デューデリジェンスの目的
- 3.デューデリジェンスの主な種類と具体的な内容
- 3.1.事業(ビジネス)デューデリジェンス
- 3.2.財務デューデリジェンス
- 3.3.法務デューデリジェンス
- 3.4.人事デューデリジェンス
- 3.5.ITデューデリジェンス
- 3.6.人権デューデリジェンス
- 3.7.不動産デューデリジェンス
- 3.8.環境デューデリジェンス
- 3.9.知的財産デューデリジェンス
- 4.デューデリジェンスの費用相場
- 4.1.弁護士に依頼する場合
- 4.2.公認会計士に依頼する場合
- 4.3.税理士に依頼する場合
- 5.デューデリジェンスにおける注意点
- 5.1.目的と範囲を明確にする
- 5.2.適切なタイミングで開始する
- 5.3.外部の専門家を積極的に活用する
- 5.4.優先順位をつけて計画的に行う
- 5.5.徹底した情報管理
- 6.まとめ
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デューデリジェンスとは?
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、企業買収や投資を行う際に対象企業の実態を多角的に調査・分析するプロセスを指します。
直訳すると「当然に払うべき注意義務」を意味し、投資家や買収企業がリスクを最小限に抑え、合理的な意思決定を行うために欠かせないステップです。
財務状況や法務リスク、事業の将来性、人事体制などを徹底的に確認することで、表面上の数字や説明では見えない課題を明らかにできます。
M&Aにおける役割
M&Aにおいてデューデリジェンスは、買収対象企業の「本当の姿」を把握するための重要な役割を担います。
例えば、財務データの裏付けを確認することで簿外債務や不正会計の有無を検証でき、法務調査によって契約リスクや訴訟リスクを洗い出すことが可能です。
事業デューデリジェンスでは市場環境や競合状況を分析し、買収後の成長性を見極めます。
これらの調査結果は、買収価格の妥当性を判断する材料となり、契約条件の調整や統合プロセス(PMI)の計画にも直結します。
もしデューデリジェンスを怠れば、買収後に予期せぬ問題が発覚し、経営に大きな打撃を与える可能性があります。
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企業価値評価(バリュエーション)との違い
企業価値評価(バリュエーション)は、対象企業の価値を数値化する作業です。
DCF法や類似会社比較法などを用いて「いくらで買収すべきか」を算定します。
一方、デューデリジェンスはその前提となる「事実確認」に重点を置きます。
つまり、バリュエーションが「価値を算定する行為」であるのに対し、デューデリジェンスは「価値算定の根拠となる情報の正確性を検証する行為」と言えます。
両者は密接に関連していますが、目的とアプローチが異なるため、M&Aを成功させるには両方を適切に組み合わせることが不可欠です。
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デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスは、M&Aや投資を成功に導くための「事前調査」として極めて重要な役割を果たします。
単なる形式的な確認作業ではなく、対象企業の実態を多角的に把握し、リスクを最小化しながら合理的な意思決定を行うための基盤です。
ここでは、その具体的な目的を4つの観点から整理します。
企業の現状確認
第一の目的は、対象企業の現状を正確に把握することです。
財務諸表の数字だけでは見えない簿外債務や不正会計の可能性、契約上のリスク、人事制度の課題などを明らかにします。
事業の収益構造や市場での競争力、ITシステムの安定性なども含め、企業の「本当の姿」を確認することで、買収後に想定外の問題が発生するリスクを減らすことができます。
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費用対効果の把握
M&Aや投資には多額の資金が必要です。
そのため、投入するコストと得られるリターンを比較し、費用対効果を検証することが欠かせません。
デューデリジェンスを通じて、対象企業が将来的にどの程度の利益を生み出せるのか、またその利益が投資額に見合うものかを判断できます。
これにより、投資が合理的かどうかを冷静に評価できるのです。
最適なM&Aの選択
調査結果を踏まえ、買収価格の妥当性や契約条件の調整を行い、最適なM&Aを選択することが可能になります。
場合によっては、デューデリジェンスの結果を受けて買収を見送る判断も合理的な選択肢となります。
つまり、デューデリジェンスは「買うかどうか」だけでなく「どの条件で買うか」を決めるための重要な材料なのです。
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経営改革
デューデリジェンスは買収前だけでなく、買収後の経営改革にも役立ちます。
調査で得られた情報を基に、買収後の統合計画に活用できます。
例えば、人事デューデリジェンスで従業員のスキル構成を把握しておけば、適切な人材配置や教育計画を立てやすくなります。
財務やITの課題を事前に認識しておけば、統合後の改善施策を迅速に打ち出すことも可能です。
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デューデリジェンスの主な種類と具体的な内容
M&Aや投資において、デューデリジェンスは対象企業のリスクや強みを正しく把握するために欠かせない調査です。
単に財務や法務を確認するだけではなく、事業、人事、IT、環境、人権など幅広い分野を網羅することで、買収後の統合や経営改革を円滑に進めることができます。
ここでは代表的な種類とその具体的な内容を詳しく解説します。
事業(ビジネス)デューデリジェンス
市場環境、競合状況、事業モデル、収益構造を分析し、事業の持続可能性や成長性を評価します。
主要顧客への依存度や新規市場への展開可能性、製品やサービスの競争優位性などを確認することで、将来の収益予測に反映させます。
特に成長戦略を描く上で欠かせない調査です。
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財務デューデリジェンス
貸借対照表や損益計算書、キャッシュフローを精査し、財務リスクの把握を確認します。
資金繰りの安定性や利益の質を見極めることで、買収価格の妥当性を判断する材料となります。
過去数年分の財務データを分析し、収益の持続性や将来の資金需要を予測することも重要です。
法務デューデリジェンス
契約書、訴訟リスク、コンプライアンス状況を確認し、法的リスクを洗い出します。
特に取引先との契約条件や知的財産権の保有状況は、将来的なトラブル防止に直結します。
独占禁止法や労働法などの遵守状況も調査対象となり、企業の法的健全性を評価します。
関連記事:CFO(最高財務責任者)とは?役割と業務内容、CFO人材採用のポイントについて解説
人事デューデリジェンス
従業員のスキル構成、労働契約、福利厚生制度、労使関係を調査します。
人材の定着率や組織文化の健全性を把握することで、統合後の人事戦略を立てやすくなります。
特にキーパーソンの離職リスクや人材育成体制の有無は、買収後の成長に大きく影響します。
ITデューデリジェンス
システムの安定性、セキュリティ、データ管理体制を確認します。
ITインフラが事業継続に耐えられるか、統合後のシステム連携に問題がないかを評価することが重要です。
近年はサイバーセキュリティリスクやクラウド環境の整備状況も注目されています。
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人権デューデリジェンス
労働環境や人権侵害リスクを調査します。
国際的なESG投資の観点から注目されており、児童労働や差別的な雇用慣行がないかを確認します。
企業が持続可能な経営を行っているかどうかを評価する上で不可欠な調査です。
不動産デューデリジェンス
所有不動産の権利関係、評価額、環境リスクを確認します。
資産価値を正しく把握することで、将来的な収益性やリスクを見極められます。
特に土地の利用制限や建物の耐震性、修繕費用の見積もりなどが重要なポイントです。
関連記事:不動産取引における反社チェックの重要性 仲介業者の義務はどこまでなのか?
環境デューデリジェンス
環境規制への適合状況や環境負荷を調査します。
規制強化によるコスト増加や社会的評価への影響を事前に把握することができます。
排出ガスや廃棄物処理の状況、環境認証の取得有無なども確認対象です。
知的財産デューデリジェンス
特許、商標、著作権などの保有状況や権利侵害リスクを確認します。
技術的優位性を守るための基盤を整えると同時に、競合との訴訟リスクを回避する役割も果たします。
特に研究開発型企業では、知的財産の価値が企業価値に直結するため、徹底的な調査が必要です。
関連記事:知財戦略(知的財産戦略)とは?得られる効果と進め方、注意点についてわかりやすく解説
デューデリジェンスの費用相場
デューデリジェンスはM&Aや投資において不可欠な調査ですが、その費用は依頼する専門家や調査範囲によって大きく変動します。
対象企業の規模や業種、調査の深度によっても相場は異なるため、事前に理解しておくことが重要です。
ここでは弁護士、公認会計士、税理士に依頼する場合の一般的な費用感を整理します。
弁護士に依頼する場合
法務デューデリジェンスは弁護士が担当し、契約関連の確認や法的リスク調査、コンプライアンス状況の調査などを行います。
費用は数百万円規模になることが多く、契約書の数や訴訟案件の有無によって変動します。
特に国際取引や知的財産権が絡む場合は調査範囲が広がり、さらに高額になるケースもあります。
関連記事:海外進出に欠かせない国際法務とは?必要なスキルや企業の取り組み、最新トピックスを解説
公認会計士に依頼する場合
財務デューデリジェンスは公認会計士が担当し、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフローを精査します。
簿外債務や不正会計の有無を確認するため、調査は詳細かつ時間を要します。
費用は数百万円から数千万円に及ぶこともあり、対象企業の規模が大きいほどコストは増加します。
特に上場企業やグローバル展開している企業では、調査の複雑さから高額になる傾向があります。
税理士に依頼する場合
税務デューデリジェンスは税理士が担当し、過去の申告内容や税務リスクを確認します。
国内企業であれば数十万円から数百万円程度が相場ですが、国際税務が絡む場合はさらに高額になることがあります。
移転価格税制や海外子会社の税務状況など、専門的な知識が必要な分野では追加費用が発生するケースも少なくありません。
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デューデリジェンスにおける注意点
デューデリジェンスはM&Aや投資を成功に導くための重要なプロセスですが、ただ闇雲に調査を進めても効果は半減してしまいます。
効率的かつ実効性のある調査を行うためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
ここでは代表的なポイントを5つに整理して解説します。
目的と範囲を明確にする
まず最も重要なのは、調査の目的と範囲を明確にすることです。
財務リスクを重点的に確認したいのか、法務上の契約リスクを洗い出したいのか、あるいは事業の成長性を評価したいのかによって、必要な調査内容は大きく変わります。
目的が曖昧なまま進めると、調査が冗長になり、費用や時間が無駄にかかる可能性があります。
事前に「何を明らかにしたいのか」を定義することが成功の第一歩です。
関連記事:予防法務とは?重要性と具体的な業務内容、注意点を解説
適切なタイミングで開始する
デューデリジェンスはM&Aの交渉がある程度進んだ段階で開始するのが一般的です。
早すぎると調査コストが無駄になる可能性があり、遅すぎると契約条件の調整に活用できなくなります。
適切なタイミングで開始することで、交渉を有利に進める材料を得られると同時に、リスクを事前に把握して契約に反映させることができます。
外部の専門家を積極的に活用する
デューデリジェンスは多岐にわたる分野を網羅するため、社内だけで完結させるのは困難です。
弁護士、公認会計士、税理士、ITコンサルタントなど、外部の専門家を積極的に活用することで、網羅的かつ正確な調査が可能になります。
専門家の知見を取り入れることで、見落としを防ぎ、調査の信頼性を高めることができます。
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優先順位をつけて計画的に行う
調査範囲が広い場合、すべてを一度に完璧に調べるのは現実的ではありません。
重要度や緊急度に応じて優先順位をつけ、計画的に進めることが効率的です。
例えば、財務や法務のリスク確認を最優先にし、その後に人事やITの詳細調査を行うといった段階的なアプローチが有効です。
徹底した情報管理
デューデリジェンスでは機密性の高い情報を扱うため、情報管理の徹底が不可欠です。
調査過程で得られる財務データや契約書、従業員情報などは外部に漏洩すれば重大な問題につながります。
アクセス権限の制御やデータの暗号化、情報共有のルール作りなど、セキュリティ対策を万全にすることが求められます。
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まとめ
デューデリジェンスは、M&Aや投資においてリスクを最小化し、合理的な意思決定を行うための必須プロセスです。
財務・法務・事業・人事など多岐にわたる分野を網羅し、費用は決して安くはありませんが、その効果は投資の成否を左右するほど大きなものです。
目的と範囲を明確にし、適切なタイミングで専門家を活用しながら進めることで、成功するM&Aや投資につながります。
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