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取締役の責任とは?義務・責任範囲・免除の条件まで徹底解説

企業経営において、取締役は重要な意思決定を担う存在です。
しかし、その権限の大きさに比例して、取締役にはさまざまな義務や責任が課されています。

近年はガバナンス強化の流れを背景に、取締役の責任追及が厳格化する傾向にあります。

この記事では、取締役の義務や責任の範囲、責任が生じるケース、免除される条件までを体系的に解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.そもそも取締役とは
    1. 1.1.従業員との違い
  2. 2.取締役の会社に対する義務や責任とは
    1. 2.1.善管注意義務
    2. 2.2.忠実義務
    3. 2.3.取締役の責任
  3. 3.取締役に責任が生じるケースと責任の範囲
    1. 3.1.任務懈怠責任
    2. 3.2.法令違反
    3. 3.3.競業取引
    4. 3.4.利益相反取引
    5. 3.5.利益供与
    6. 3.6.分配可能額を超過した剰余金の配当等
    7. 3.7.剰余金の配当等により欠損を生じた場合
    8. 3.8.出資の履行が不適法な場合
  4. 4.取締役の責任が免除される場合
    1. 4.1.総株主の同意
    2. 4.2.責任の一部免除
    3. 4.3.株主総会の特別決議による一部免除
    4. 4.4.定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定による一部免除
    5. 4.5.責任限定契約による一部免除
    6. 4.6.賠償責任保険(D&O保険)
  5. 5.取締役の責任の追及方法
    1. 5.1.会社が取締役の責任を追及する場合
    2. 5.2.株主が取締役の責任を追及する場合(株主代表訴訟)
  6. 6.まとめ

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そもそも取締役とは

そもそも取締役とは取締役とは、会社の経営方針を決定し、組織全体の方向性を左右する重要な役割を担う存在です。

会社法に基づき株主総会で選任され、企業の中枢として意思決定や業務執行の監督を行います。

企業活動が複雑化する現代では、財務・法務・リスク管理など多方面の知識が求められ、一般的な管理職とは異なる高度な責任が課されています。

従業員との違い

従業員は会社と雇用契約を結び、指揮命令に従って業務を遂行します。

一方、取締役は会社と委任契約を結び、経営判断を行う立場です。
労働時間や勤務場所の拘束を受ける従業員に対し、取締役は会社の利益を最大化するための意思決定を求められます。

この違いにより、取締役には善管注意義務や忠実義務といった、より重い法的責任が課される点が特徴です。

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取締役の会社に対する義務や責任とは

取締役の会社に対する義務や責任とは取締役は会社の経営を担う立場として、会社法に基づき高度な義務と責任を負います。

経営判断の妥当性や意思決定のプロセスが常に問われるため、日々の業務において慎重かつ誠実な対応が求められます。

会社の資産を適切に管理し、企業価値を損なわないよう行動することが、取締役の基本的な役割です。

善管注意義務

善管注意義務とは、取締役が「専門的知識や経験を備えた管理者として、合理的な注意を払って職務を遂行する義務」を指します。

重大な意思決定を行う際には、必要な情報を収集し、リスクを踏まえて判断することが求められます。

例えば、十分な調査を行わずに投資を決定した結果損害が生じた場合、善管注意義務違反と評価される可能性があります。

経営判断には裁量が認められていますが、その過程が合理的であったかどうかが重要です。

関連記事:雇用に関連する法律と主なルール 違反した場合のリスクと罰則も解説

忠実義務

忠実義務は、取締役が会社の利益を最優先に行動することを求める義務です。
自己の利益や第三者の利益を優先する行為は許されません。

たとえば、取締役自身が関係する企業に有利な条件で契約を結ぶ、会社の情報を私的に利用するなどの行為は忠実義務違反となります。

取締役は常に公正で透明性の高い意思決定を行う必要があります。

取締役の責任

これらの義務に違反した場合、取締役は会社や株主に対して損害賠償責任を負うことがあります。

故意だけでなく過失による損害も対象となり、取締役会の決議に関与した場合や他の取締役の不正を見過ごした場合にも責任が及ぶことがあります。

取締役は、経営判断の結果に対しても法的責任を負う立場であることを理解しておく必要があります。

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取締役に責任が生じるケースと責任の範囲

取締役に責任が生じるケースと責任の範囲取締役は会社の経営を担う立場として、重大な意思決定に関与します。
そのため、判断の誤りや義務違反が会社に損害を与えた場合、法的責任を負うことがあります。

責任が発生する場面は多岐にわたり、会社法では具体的なケースが明確に定められています。
ここでは、代表的な責任発生事由とその範囲を整理します。

任務懈怠責任

任務懈怠責任とは、取締役が職務遂行に必要な注意を怠った結果、会社に損害が生じた場合に問われる責任です。

例えば、財務状況を十分に確認せずに投資を決定したり、リスク管理を怠ったことで損失が発生した場合が該当します。

取締役は専門的知識を前提に選任されているため、一般の従業員よりも高い注意義務が求められます。

経営判断には裁量が認められていますが、その判断過程が合理的であったかどうかが重要な判断基準となります。

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法令違反

会社法や金融商品取引法などの法令に違反した場合、取締役は損害賠償責任を負います。

虚偽記載のある財務書類の提出、内部統制の不備、適切な開示義務を怠った場合などが典型例です。

法令違反は会社の信用を大きく損なうため、取締役の責任は特に重く評価されます。
故意だけでなく過失による違反も責任の対象となります。

競業取引

取締役が会社と競合する事業を行うことは原則として禁止されています。

無断で競業行為を行った場合、会社に対して損害賠償責任を負うほか、競業によって得た利益を会社に返還する義務も生じます。

競業取引は会社の利益を直接侵害する行為であるため、厳格に扱われます。

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利益相反取引

取締役個人の利益と会社の利益が対立する取引を行う場合、取締役会の承認が必要です。

承認を得ずに取引を行った場合、取引は無効となる可能性があり、取締役は会社に対して損害賠償責任を負います。

例えば、取締役が自身の関係会社に有利な条件で契約を結ぶといったケースが該当します。

利益供与

株主や第三者に対して不当な利益を提供する行為は法律で禁止されています。
議決権行使を誘導するための金銭供与などが典型例です。

利益供与を行った取締役は、会社に対して損害賠償責任を負うだけでなく、刑事罰の対象となることもあります。

関連記事:株主総会とは?基礎知識や決定事項、開催の流れをわかりやすく解説

分配可能額を超過した剰余金の配当等

会社法では、分配可能額を超えて配当を行うことは禁止されています。
取締役がこれを行った場合、会社に対して連帯して賠償責任を負います。

財務状況を適切に把握しないまま配当を決定した場合、任務懈怠責任と併せて追及されることもあります。

剰余金の配当等により欠損を生じた場合

適法な手続きで配当を行ったとしても、その結果として会社に欠損が生じた場合、取締役の責任が問われることがあります。

特に、財務状況が悪化しているにもかかわらず無理な配当を行った場合、経営判断の妥当性が厳しく評価されます。

出資の履行が不適法な場合

出資の履行が適切に行われていないにもかかわらず、取締役がこれを認めた場合、損害賠償責任を負います。

例えば、現物出資の評価が不当に高く見積もられていたにもかかわらず、取締役が適切な確認を怠った場合などが該当します。

会社の資本の健全性に関わる問題であるため、責任は重く扱われます。

関連記事:中小企業が法務トラブルを防ぐには?法務部門の重要性と導入のポイントを解説

取締役の責任が免除される場合

という見出しのブログに合う画像を生成して  文字は入れないで取締役は会社の経営を担う立場として重い責任を負いますが、その責任が常に無制限に追及されるわけではありません。

会社法では、一定の条件を満たすことで責任を軽減・免除できる制度が整備されています。
これは、取締役が過度なリスクを恐れて意思決定を萎縮させないための仕組みでもあります。

ここでは、代表的な免除制度を整理します。

総株主の同意

取締役の責任を最も広く免除できるのが「総株主の同意」です。
株主全員が同意すれば、取締役の損害賠償責任を完全に免除できます。

ただし、株主が一人でも反対すれば成立しないため、実務上は利用が難しい制度です。
また、故意や重大な過失がある場合には、そもそも同意の対象とならないケースもあります。

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責任の一部免除

会社法では、取締役の責任を「一部」免除する制度が認められています。
これは、取締役の責任を一定の範囲で軽減し、経営判断の萎縮を防ぐための仕組みです。

免除の方法には複数あり、会社の規模やガバナンス体制に応じて使い分けられます。

株主総会の特別決議による一部免除

株主総会で特別決議を行うことで、取締役の責任を軽減できます。

特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要な決議です。

責任の軽減幅は法律で上限が定められており、故意や重大な過失がある場合は免除の対象外となります。
株主の監視機能を保ちながら、取締役の負担を調整できる制度といえます。

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定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定による一部免除

会社の定款に規定がある場合、取締役会の決議によって責任を軽減することも可能です。
株主総会を開催する必要がないため、迅速に対応できる点がメリットです。

中小企業では、株主と取締役が重複しているケースも多く、実務上利用されることが少なくありません。
ただし、こちらも重大な過失がある場合には免除できません。

責任限定契約による一部免除

社外取締役や監査等委員など、一定の役職にある取締役は、会社と「責任限定契約」を締結することで、損害賠償額の上限をあらかじめ定めることができます。

これにより、専門性を持つ外部人材が取締役に就任しやすくなり、ガバナンス強化にもつながります。

責任の上限は法律で定められており、無制限に軽減できるわけではありません。

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賠償責任保険(D&O保険)

D&O保険は、取締役が職務に関連して損害賠償請求を受けた場合に、その賠償金や訴訟費用を補償する保険です。

責任そのものを免除する制度ではありませんが、実質的に取締役の負担を軽減する役割を果たします。

企業のリスク管理の一環として導入が進んでおり、取締役の安心感にもつながります。

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取締役の責任の追及方法

取締役の責任の追及方法取締役が義務に違反し会社に損害を与えた場合、その責任を誰がどのように追及するのかが重要なポイントとになります。

責任追及の主体は大きく「会社」と「株主」の2つに分かれ、それぞれに異なる手続きが用意されています。

会社が取締役の責任を追及する場合

会社は、取締役が任務を怠ったり不正行為を行った場合、損害賠償請求を行うことができます。

通常は取締役会や代表取締役が中心となって手続きを進めますが、取締役同士の関係性や内部事情によっては、責任追及が十分に行われないケースもあります。

そのため、会社内部の監督機能が適切に働くことが重要です。

株主が取締役の責任を追及する場合(株主代表訴訟)

会社が適切に責任追及を行わない場合、株主が会社に代わって取締役に損害賠償を求める「株主代表訴訟」を提起できます。

これは会社の利益を守るための強力な手段であり、ガバナンス強化の観点からも重要な制度です。

株主は一定の条件を満たすことで訴訟を起こすことができ、取締役の不正や怠慢を外部から是正する役割を果たします。

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まとめ

取締役は会社の経営を担う重要な立場であり、その権限の大きさに応じて高度な義務と責任が課されています。
善管注意義務や忠実義務を怠れば、損害賠償責任を負う可能性があります。

一方で、責任の一部免除制度やD&O保険など、取締役を保護する仕組みも整備されています。
企業としては、取締役が適切に職務を遂行できる環境を整えることが重要です。

また、合理的な情報収集と適切な意思決定プロセスを経た経営判断については、「経営判断原則」により一定の保護が認められています。

取締役自身も法令やガバナンスに関する知識を深め、リスク管理を徹底することが求められます。

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RISK EYES編集部
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反社チェックツール「RISK EYES」のブログ編集部です。反社関連の情報だけでなく、与信やコンプライアンス全般、IPO準備などについても執筆しています。
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