
テレワーク導入時に必要なルールとは?就業規則変更と社内運用のポイントをわかりやすく解説
働き方改革や感染症対策をきっかけに、テレワークは多くの企業で定着しつつあります。
しかし、導入にあたっては「自由な働き方」の裏に潜む法的・運用面の課題を見逃してはいけません。
この記事では、テレワーク導入時に必要なルールや就業規則変更の注意点、社内運用のポイントを体系的に解説します。
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テレワークとは
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用して、オフィス以外の場所で業務を行う柔軟な働き方です。
自宅や外出先、サテライトオフィスなど、勤務場所にとらわれず仕事ができるため、通勤時間の削減や生産性の向上が期待されます。
働き方改革や感染症対策を背景に急速に普及し、多様な働き方の一つとして定着しつつあります。
一方で、勤怠管理や情報セキュリティ、業務報告の方法など、従来とは異なる課題もあるため、制度設計や社内ルールの整備が不可欠です。
企業は法令遵守と運用の両面から、安心して働ける環境づくりを進める必要があります。
関連記事:今すぐ取り組むべき就業規則の見直し―押さえるべきチェック項目と変更手順を解説
テレワークで最低限必要なルールと決め方
テレワークを円滑に運用するためには、企業と従業員双方が安心して働ける環境を整える必要があります。
そのためには、就業規則や社内規定に基づいた明確なルール設定が不可欠です。
曖昧な運用は労務トラブルや生産性の低下を招くため、制度設計段階で基本的なルールを整理しておくことが重要です。
以下では、テレワーク導入時に最低限整備すべきルールとその決め方について、6つの観点から解説します。
在宅勤務の対象者
在宅勤務の対象者は、業務内容や職種に応じて選定する必要があります。
すべての従業員が一律に対象となるわけではなく、業務の特性やセキュリティリスク、顧客対応の有無などを踏まえた判断が求められます。
対象者の選定基準は、社内での公平性を保つためにも明文化し、従業員に丁寧に説明することが重要です。
また、業務の変化に応じて対象範囲を見直す柔軟性も持たせておくと、制度の持続性が高まります。
関連記事:副業は禁止できる?違法性から実例まで企業の判断基準を解説
勤怠管理と労働時間のルール
テレワークでも労働時間の管理は法令上の義務です。
勤務開始・終了時刻の報告方法(打刻システム、チャット報告など)を明確にし、休憩時間の取得や残業申請の手続きもルール化する必要があります。
特に、フレックスタイム制やみなし労働時間制を導入する場合は、就業規則への記載と労使協定の締結が必須です。
管理者が勤務状況を把握できる仕組みと、従業員が自己管理しやすい環境の両立が求められます。
就業場所のルール
在宅勤務では、業務に適した環境が整っているかが重要なポイントです。
騒音や通信環境、第三者の立ち入りなどに配慮し、業務に集中できるスペースの確保が求められます。
また、就業場所が自宅以外(実家、カフェなど)になる場合は、事前申請や承認制を設けることで、セキュリティや労災対応のリスクを軽減できます。
災害時の対応や緊急連絡体制も併せて整備しておくと、企業としての備えが万全になります。
関連記事:オフィスセキュリティの基本と実践!重要性・リスク・対策を徹底解説
業務報告・コミュニケーションのルール
テレワークでは、対面でのやり取りが減る分、業務報告やコミュニケーションの質が業務効率に直結します。
日報・週報の提出、定例ミーティングの実施、チャットやメールの使用ルールなどを整備し、情報共有のタイミングや方法を統一することが重要です。
特に、上司との1on1ミーティングや雑談の機会を設けることで、孤立感の防止やメンタルヘルスのケアにもつながります。
信頼関係の維持には、コミュニケーションの「見える化」が効果的です。
情報セキュリティと情報機器の取り扱い
社外で業務を行うテレワークでは、情報漏洩リスクへの対策が不可欠です。
VPNの使用義務、業務用PC・スマホの貸与、セキュリティソフトの導入など、技術的な対策を講じるとともに、紙資料の持ち出し禁止やUSBメモリの使用制限など、運用面のルールも整備しましょう。
個人所有機器の使用可否や、紛失・盗難時の報告体制も明記しておくことで、万が一のリスクに備えることができます。
情報管理は企業の信用にも直結するため、徹底が必要です。
費用負担と在宅勤務手当のルール
在宅勤務に伴う通信費や光熱費などの費用負担は、企業と従業員の間でトラブルになりやすいポイントです。
企業としては、一律の在宅勤務手当を支給する方法や、実費精算方式を採用するなど、運用に合った対応を検討する必要があります。
また、業務用の椅子やモニターなどを貸与する場合は、管理方法や返却ルールも定めておきましょう。
費用負担のルールは、就業規則または在宅勤務規定に明記し、従業員に周知することが重要です。
関連記事:労働基準法における休憩時間の原則や注意点とは?違反時の罰則についても解説
テレワークに伴う就業規則変更の注意点
テレワーク制度を導入する際には、就業規則の見直しが不可欠です。
特に、労働時間、勤務場所、手当、勤怠管理などに関する変更は、労働基準法に則った適切な手続きが求められます。
制度の信頼性と法的安定性を確保するためには、単なるルールの追加ではなく、企業としての働き方の再定義と、従業員との合意形成が重要です。
以下では、就業規則変更にあたって押さえておきたい4つのポイントを解説します。
労働基準法に則ってまとめる
就業規則の変更は、労働基準法第89条に基づいて行う必要があります。
労働時間、休憩、休日、賃金などの「絶対的記載事項」に該当する内容を変更する場合は、法令に沿った記載が求められます。
たとえば、フレックスタイム制やみなし労働時間制を導入する場合は、労使協定の締結と就業規則への明記が必要です。
曖昧な表現は避け、具体的かつ実務に即した内容にすることが重要です。
関連記事:日本の労働法とは?種類と特徴、使用者の義務や注意すべきポイントを解説
従業員の意見を取り入れる
制度変更は、企業側の一方的な決定ではなく、従業員の意見を反映させることが望まれます。
過半数代表者からの意見聴取は法的に義務付けられており、形式的な手続きにとどまらず、実質的な納得感を得ることが制度定着の鍵となります。
アンケートやヒアリングを通じて現場の声を集め、業務実態に即したルール設計を行いましょう。
従業員の理解と協力が得られることで、制度の運用もスムーズになります。
所轄労働基準監督署への届け出を行う
就業規則を変更した場合は、所轄の労働基準監督署への届け出が必要です。
提出書類には、変更後の就業規則と過半数代表者の意見書が含まれます。
届け出を怠ると、万が一の労務トラブル時に企業側の不備とされる可能性があるため、必ず手続きを完了させましょう。
また、届け出後は社内への周知も忘れずに行い、従業員が新しいルールを正しく理解できるようにすることが大切です。
詳細ルールは在宅勤務規定・ガイドラインで補足する
就業規則は制度の骨格を示すものであり、細かな運用ルールまでは網羅できません。
そのため、在宅勤務に関する詳細なルールは、別途「在宅勤務規定」や「テレワークガイドライン」として整備するのが一般的です。
これにより、柔軟な運用と法令遵守の両立が可能になります。
たとえば、業務報告の方法、情報機器の取り扱い、費用負担の詳細などはガイドラインで補足し、従業員に分かりやすく伝えることが効果的です。
関連記事:労務管理の目的と主な業務とは?関連法律や注意すべきポイントを解説
テレワークのための社内規定や運用ルール作成のポイント
テレワーク制度の導入は、単なる勤務形態の変更にとどまらず、企業文化や働き方の再定義を伴います。
制度を形骸化させないためには、社内規定や運用ルールの設計段階で、企業としての価値観や従業員の実態を踏まえた視点が不可欠です。
以下では、制度設計時に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
「自由な働き方」とは何かを考える
テレワークは「自由な働き方」と言われますが、その自由は自己管理と責任の裏付けがあってこそ成り立ちます。
単に場所や時間の制約が減るだけでなく、成果に基づいた評価や自律的な業務遂行が求められるため、企業として「自由とは何か」を定義することが重要です。
たとえば、「成果重視」「信頼ベース」「柔軟性と規律の両立」など、働き方の哲学を明文化することで、制度の方向性がぶれずに運用できます。
関連記事:社内コミュニケーションとは?重要性・活性化のメリット・具体的なアイデアを徹底解説
テレワーク特有の事情を考慮する
在宅勤務には、オフィス勤務とは異なる課題があります。
通信環境の不安定さ、家族との空間共有、孤独感やメンタルヘルスの低下など、従業員の生活環境に起因する要素が業務に影響を与えることもあります。
これらを踏まえ、業務用機器の貸与、オンライン相談窓口の設置、定期的な1on1面談の実施など、テレワーク特有の事情に対応した支援策を社内規定に盛り込むことが、制度の持続性を高める鍵となります。
テレワークに必要な費用を確認する
テレワークでは、従業員が自宅で業務を行うため、通信費や光熱費、備品購入などの費用が発生します。
これらの費用負担については、企業と従業員の間でトラブルになりやすいため、事前にルールを明確にしておくことが重要です。
たとえば、一律の在宅勤務手当を支給する方法や、実費精算方式を採用するケースがあります。
また、業務用の椅子やモニターなどを貸与する場合は、管理方法や返却ルールも定めておきましょう。
評価方法を策定する
テレワークでは、従来の「勤務態度」や「出勤状況」による評価が難しくなるため、成果やプロセスを可視化する評価方法が求められます。
業務報告の頻度や内容、目標管理制度(MBO)の導入、定量・定性の評価指標の整備など、テレワークに適した評価基準を設けることで、従業員の納得感とモチベーションを高めることができます。
評価制度は、制度の信頼性と公平性を支える重要な要素です。
関連記事:人事評価制度を導入するメリットとは?課題や制度を見直すべきタイミングを解説
まとめ
テレワーク導入には、法令遵守と実務運用の両面からルール整備が不可欠です。
就業規則の変更や社内規定の策定を通じて、従業員が安心して働ける環境を構築することが、制度定着の鍵となります。
柔軟性と公平性を両立した運用を目指しましょう。
関連記事:労務管理の目的と主な業務とは?関連法律や注意すべきポイントを解説
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