
IPOで資金調達をする方法とは?種類・流れ・リスク管理を徹底解説
IPOは、企業が成長投資に必要な資金を市場から調達する手段の一つです。
上場を通じて知名度や信用力が高まり、事業拡大、採用強化、ガバナンスの向上なども期待できます。
一方、IPOの準備には、監査対応、内部統制、情報開示、反社チェックなど、多岐にわたる体制整備が必要です。
この記事では、IPOによる資金調達の仕組みやメリット・デメリット、上場前後の調達方法、準備プロセス、リスク管理について解説します。
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目次[非表示]
- 1.IPOとは何か|資金調達手段としての基本理解
- 2.IPOによる資金調達のメリット・デメリット
- 2.1.IPOのメリット
- 2.2.IPOのデメリット
- 2.3.VC・融資・M&Aとの違い
- 3.IPO前後で活用される資金調達の種類
- 3.1.エクイティファイナンス|株式を使った調達方法
- 3.1.1.第三者割当増資
- 3.1.2.VC・CVCからの出資
- 3.2.デットファイナンス|借入による調達方法
- 3.3.メザニンファイナンス|株式と借入の中間
- 3.3.1.新株予約権付社債(ワラント債)
- 3.3.2.劣後ローン
- 3.4.IPO準備で増えるブリッジファイナンス
- 3.4.1.上場準備費用の確保と短期資金の補填
- 4.IPO準備で必要となるプロセスと資金調達の流れ
- 4.1.IPO準備の全体ロードマップ
- 4.2.主幹事証券会社の選定と資金調達戦略
- 4.3.監査・内部統制・ガバナンス体制の整備
- 4.4.投資家向け資料(IR)の作成と評価ポイント
- 4.4.1.成長ストーリーの構築
- 4.4.2.市場が重視するKPIの整理
- 5.IPO準備で求められるコンプライアンスとリスク管理
- 6.IPO準備を効率化するツール・サービス
- 6.1.IPO支援サービス
- 6.2.反社チェックツール
- 6.3.管理体制構築のポイント
- 7.まとめ
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IPOとは何か|資金調達手段としての基本理解
IPO(Initial Public Offering)とは、未上場企業が自社株式を証券取引所に上場し、一般の投資家が売買できるようにすることです。
IPO時には、新株を発行する「公募」と、既存株主が保有株式を売却する「売出し」が行われることがあります。
公募による払込金は企業に入りますが、売出しの代金は売却した株主が受け取るため、企業の資金調達にはなりません。
IPOの目的と企業成長における役割
IPOの目的は、成長投資のための資金調達だけではありません。
情報開示や管理体制の整備を通じた信用力の向上、知名度の向上、採用力の強化、ガバナンスの高度化なども期待できます。
調達した資金は、設備投資、新規事業、研究開発、海外展開、M&Aなどに活用できます。
ただし、IPO自体を目的にせず、調達資金をどのように企業成長へ結びつけるかを明確にすることが重要です。
関連記事:IPO準備企業が上場審査に向けて整えるべき労務管理体制とは
IPOが資金調達として選ばれる理由
IPOが資金調達の選択肢となる主な理由は、次のとおりです。
- 公募増資により、返済義務のない資金を調達できる
- 上場後も、公募増資や社債など資金調達の選択肢が広がる
- 情報開示や管理体制の整備が、対外的な信用向上につながり得る
- 上場株式やストックオプションを人材施策に活用できる
一方、新株の発行によって既存株主の持分が希薄化する可能性があります。
上場後は株主への説明責任も生じるため、調達額だけで判断しないことが大切です。
IPOで調達できる金額の目安と市場環境の影響
IPOで調達できる金額は、発行株式数、公開価格、企業価値、公募と売出しの比率、投資家需要などによって異なります。
そのため、市場区分だけを基準に一律の目安を示すことは困難です。
株式市場が不安定な場合、公開価格や需要が想定を下回り、計画どおりに資金を調達できないこともあります。
主幹事証券会社と協議し、必要資金、市場環境、希薄化への影響を踏まえて設計する必要があります。
関連記事:IPO準備中にも影響する内部統制報告書とは J-SOXへの対応について解説
IPOによる資金調達のメリット・デメリット
IPOは有力な資金調達手段の一つですが、準備・維持コストや株主対応も伴います。
上場後の負担まで含めて検討することが重要です。
IPOのメリット
IPO時に公募増資を行えば、借入金のような元本返済を伴わない資金を調達できます。
中長期的な成長投資に資金を充てやすい点がメリットです。
また、上場に向けて財務報告、内部統制、コンプライアンスなどの体制を整えることは、経営管理の高度化にもつながります。
知名度や社会的信用が高まり、取引や採用にプラスの影響を与える可能性もあります。
関連記事:IPOの成功率を高めるには?成功のポイントと反社チェックの重要性を徹底解説
IPOのデメリット
IPO準備には、監査法人や証券会社への費用、社内規程の整備、人材採用、システム導入など、多くの時間とコストがかかります。
経理、法務、総務、人事などに業務が集中することもあります。
上場後には、決算短信・四半期決算短信、半期報告書、有価証券報告書、適時開示、コーポレート・ガバナンスに関する報告書などへの対応が必要です。
株価や株主の評価を意識した経営も求められます。
VC・融資・M&Aとの違い
VCやCVCからの出資では、資金に加えて経営支援や取引先の紹介を受けられる場合があります。
一方、持分の希薄化や投資家による経営への関与も考慮しなければなりません。
融資は持分の希薄化を避けられますが、利息と元本の返済が必要です。
M&Aは、株式取得や事業譲渡などを通じて、事業拡大、再編、事業承継などを実現する手段です。
IPOでは株主構成や市場からの評価も企業価値に影響します。
目的や財務状況に応じて、複数の方法を比較しましょう。
関連記事:IPO準備時におけるM&Aのメリット・デメリット 実施時の注意点も解説
IPO前後で活用される資金調達の種類
IPOの準備段階から上場後にかけて、企業は複数の資金調達手段を組み合わせることがあります。
資金使途、必要時期、返済能力、希薄化、上場スケジュールへの影響を確認することが重要です。
エクイティファイナンス|株式を使った調達方法
エクイティファイナンスは、株式などを発行して資金を調達する方法です。
借入金のような返済義務はありませんが、既存株主の持分が希薄化する可能性があります。
第三者割当増資
第三者割当増資は、特定の投資家へ新株を割り当てる方法です。
事業会社を株主に迎えることで、業務提携や販路拡大につながる場合もあります。
株主構成や議決権比率が変わるため、資本政策へのや影響を確認することが重要です。
関連記事:IPO準備企業の経理に求められる役割とは 具体的に行う業務についても解説
VC・CVCからの出資
VCやCVCからの出資では、事業支援、取引先の紹介、経営に関する助言などを受けられる場合があります。
ただし、投資契約の内容によっては資本政策やIPOスケジュールに影響するため、契約条件を十分に確認しましょう。
デットファイナンス|借入による調達方法
デットファイナンスは、金融機関からの借入や社債によって資金を調達する方法です。
株式の希薄化を避けられる一方、返済義務と利息負担が生じます。
金融機関からの融資
金融機関からの融資は、運転資金や設備投資などに広く利用されます。
IPO準備に伴う監査、システム整備、人材採用などの費用に充てる場合もあります。
上場時の公募資金を返済原資として想定する場合でも、IPOの延期や調達額の減少を考慮し、代替となる資金繰り計画を用意することが重要です。
関連記事:IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは メリット・デメリットを解説
社債・私募債の発行
社債や私募債は、中長期の資金を調達する選択肢です。
資金源の多様化につながりますが、利息の支払いと償還が必要です。
発行費用や契約条件を踏まえ、融資との違いを比較して検討することが重要です。
メザニンファイナンス|株式と借入の中間
メザニンファイナンスは、一般的な融資より返済順位が低い借入や、株式への転換・取得に関する権利が付いた金融商品などを利用する方法です。
柔軟な資金調達が可能ですが、契約内容が複雑なため、専門家と検討することが望まれます。
新株予約権付社債(ワラント債)
新株予約権付社債は、社債に新株予約権が付いた金融商品です。
発行条件によって資金の払込みや株式への転換・取得の仕組みが異なります。
新株予約権の行使により株式が交付されると、既存株主の持分が希薄化する可能性があります。
行使条件、償還条件、資本政策への影響を確認する必要があります。
劣後ローン
劣後ローンは、一般債権より返済順位が低く設定された借入です。
一定の条件を満たす資本性劣後ローンは、金融機関の債務者区分の判断などにおいて、資本に準じて評価される場合があります。
返済期間や金利などの条件を十分に確認することが重要です。
関連記事:上場には何年かかる?IPO準備企業が押さえておきたい上場への作業とスケジュール
IPO準備で増えるブリッジファイナンス
IPO準備では、監査費用、内部統制の整備、人材採用などの支出が先行することがあります。
この期間の資金需要を補う方法がブリッジファイナンスです。
上場準備費用の確保と短期資金の補填
ブリッジファイナンスには、金融機関による短期融資や既存株主からの追加出資などがあります。
IPOの延期や公開価格の変動も考慮し、代替となる資金計画を準備しておくことが重要です。
関連記事:IPO準備企業が上場を目指す上で知っておくべきインサイダー取引規制とは
IPO準備で必要となるプロセスと資金調達の流れ
IPO準備は、会計、内部統制、ガバナンス、コンプライアンスなどを、上場会社に求められる水準へ整える全社的なプロジェクトです。
IPO準備の全体ロードマップ
IPO準備の期間は企業の状況によって異なりますが、複数年を要するのが一般的です。
主な流れは次のとおりです。
- IPOの目的、上場時期、候補市場を検討する
- 資本政策、事業計画、予算管理を整備する
- 監査法人と主幹事証券会社を選定する
- 会計、内部統制、ガバナンス上の課題を改善する
- 申請書類を作成し、引受審査・上場審査へ進む
- 上場承認後、投資家への説明や公開価格の決定を行う
経営層と経理・法務・総務・人事などが役割と期限を共有し、全社で進める必要があります。
関連記事:IPO準備企業が上場までのフェーズごとにやるべきこと
主幹事証券会社の選定と資金調達戦略
主幹事証券会社はIPO準備全体を支援する中心的な役割を担います。
資本政策、上場市場、申請準備、引受審査、公開価格の決定、投資家への販売など、IPO実現に向けた幅広い業務をサポートします。
選定時には、業界への理解、IPOの引受実績、販売力、審査対応、担当チームなどを比較します。
資金調達戦略では、必要資金と使途を算定し、公募・売出しの比率、希薄化、既存株主の意向を調整することが重要です。
監査・内部統制・ガバナンス体制の整備
一般的には、監査法人によるショートレビューで会計・管理上の課題を把握し、必要期間の監査を受けながら指摘事項を改善します。
内部統制では、決算・財務報告、販売、購買、在庫、ITなどの業務を整理し、権限規程、職務分掌、承認フローを整備します。
規程を作成するだけでなく、継続的に運用し、証跡を保存することが必要です。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
投資家向け資料(IR)の作成と評価ポイント
IPOでは、投資家が事業内容、競争優位性、リスク、財務状況、成長可能性を判断できる情報を提示します。
特にグロース市場では、「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示が求められます。
将来性を強調するだけでなく、実績や合理的な前提に基づいて説明することが重要です。
成長ストーリーの構築
成長ストーリーでは、市場環境、顧客課題、競争優位性、収益構造、成長施策、資金使途を一貫した流れで示します。
市場規模だけでなく、顧客数、契約実績、継続率、販売体制など、自社が成長を実現できる根拠を示しましょう。
主要なリスクや前提条件も説明することで、信頼性が高まります。
市場が重視するKPIの整理
KPIは、事業モデルと成長戦略の進捗を示す指標です。
SaaS企業ではARRや解約率、EC企業では購入者数や平均注文額などが例として挙げられます。
上場前から指標の定義、集計方法、責任部署を定め、正確かつ継続的に集計できる体制を整える必要があります。
関連記事:IPOのメリットとデメリットとは?企業・経営者・従業員に与える影響をわかりやすく解説
IPO準備で求められるコンプライアンスとリスク管理
IPO準備では、財務情報だけでなく、コンプライアンス、内部管理、情報開示を継続的に運用できるかも確認されます。
証券会社・取引所が重視するコンプライアンス基準
主幹事証券会社や取引所は、経営の健全性、内部管理体制、情報開示体制などを確認します。
主な確認項目として、次のようなものがあります。
- 関連当事者取引や利益相反の管理
- 法令違反や不祥事への対応
- 内部通報制度の整備・運用
- 重要情報や個人情報の管理
- 反社会的勢力を排除する体制
- 規程、研修、承認記録などの運用証跡
形式的に規程をそろえるだけでなく、実際の運用状況を説明できることが重要です。
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なぜIPO準備で反社チェックが必須なのか
東京証券取引所への新規上場申請では、「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」などの提出が求められます。
反社会的勢力との関係は、企業経営の健全性や投資者保護に関わる重大な問題です。
役員、主要株主、重要な取引先、顧問、業務委託先などについて、関係性やリスクに応じて確認対象と頻度を設定します。
具体的な範囲は、主幹事証券会社や専門家とすり合わせることが重要です。
出資者・融資元の反社チェックが求められる理由
出資者や融資元の健全性は、資本政策やガバナンスに関わります。
特に主要株主や重要な資金提供者について疑義が生じると、上場準備に影響する可能性があります。
資金を受け入れる際は、重要性とリスクに応じて、相手方の基本情報や関係者などを確認します。
調査日、情報源、確認結果、判断理由、承認者、追加調査の内容を記録し、後から説明できる状態にしておきましょう。
関連記事:スタートアップに絶対押さえてほしい「IPO/M&A」を妨げる反社のワナ
IPO準備を効率化するツール・サービス
IPO準備では、監査対応、内部統制、申請書類、反社チェック、IRなどの業務が並行して進みます。
外部専門家やITツールを利用することで、社内負担を抑えながら進めやすくなります。
ただし、外部へ委託しても、最終的な方針決定や管理責任まで委ねられるわけではありません。
自社の責任者と判断基準を明確にする必要があります。
IPO支援サービス
IPO支援サービスでは、プロジェクト管理、内部統制の文書化、業務フローの整備、申請書類の作成などの支援を受けられます。
選定時には、支援範囲、同業種での実績、担当者の経験、監査法人・証券会社との役割分担、料金体系を確認します。
支援会社が作成した文書を受け取るだけでなく、自社で運用できる状態を目指すことが重要です。
関連記事:IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要?必要な理由と選び方について解説
反社チェックツール
反社チェックツールを活用すれば、報道記事やデータベースの検索、継続的な再確認、調査記録の保存などを効率化できます。
対象件数が増えるIPO準備企業では、検索方法の統一や証跡管理にも役立ちます。
例えばRISK EYESでは、複数の情報源を横断検索できるほか、検索履歴や調査結果を自動で保存できるため、監査や上場審査で求められる証跡管理の効率化にもつながります。
検索結果には同姓同名の別人や無関係な情報が含まれる場合があります。
ツールの結果だけで取引可否を判断せず、同一性、情報の信頼性、事案の内容、発生時期などを確認することが必要です。
関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説上場準備にIPO経験者は必要?経験者のスキルとIPOチームのメリットを解説
管理体制構築のポイント
IPO準備で管理体制を構築する際は、次の点を確認しましょう。
- 権限規程、職務分掌、承認フローを明確にする
- 特定の担当者に業務や権限を集中させない
- 承認記録、調査結果、議事録、研修記録を保存する
- 問題発生時の報告先と判断責任者を定める
- 運用状況を定期的に確認し、改善する
外部サービスやツールは、目的と利用範囲を明確にしたうえで導入することが重要です。
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まとめ
IPOは、公募増資で返済不要の成長資金を確保できる一方、既存株主の希薄化や上場後の開示負担が生じます。
VC・CVC出資、融資、社債、メザニンなど他の手段も含め、自社の財務状況と資金使途に合う方法を比較することが重要です。
上場準備では監査・内部統制・ガバナンス・情報開示を並行して整備し、効率的な体制構築を進めることが求められます。
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