
労働施策総合推進法とは?企業の義務・2026年改正のポイント・対応手順を解説
労働施策総合推進法は、労働施策の基本方針などを定める法律です。
2019年の改正によって職場におけるパワーハラスメント防止措置が事業主に義務づけられたことから、一般に「パワハラ防止法」と呼ばれることもあります。
2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が、すべての事業主に義務づけられます。
また、改正男女雇用機会均等法により、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置も義務化されます。
この記事では、改正のポイントと実務対応の進め方を解説します。
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目次[非表示]
- 1.労働施策総合推進法とは|企業が押さえるべき基本ポイント
- 1.1.労働施策総合推進法の目的と位置づけ
- 1.2.法律の構成と対象となる企業
- 1.3.2026年の改正ポイント
- 1.3.1.カスタマーハラスメント防止措置の義務化
- 1.3.2.すべての事業主が対象
- 1.3.3.施行時期
- 1.4.企業に与える影響
- 2.労働施策総合推進法が求める企業の義務
- 2.1.事業主の方針の明確化と周知・啓発
- 2.2.相談体制の整備と不利益取扱いの禁止
- 2.3.パワーハラスメント・カスタマーハラスメントと他のハラスメント対策との関係
- 2.4.企業規模にかかわらず求められる対応
- 3.労働施策総合推進法に基づく実務対応の進め方
- 3.1.社内規程・就業規則の整備
- 3.2.相談体制・通報窓口の設置と運用
- 3.3.従業員教育・管理職研修の実施
- 3.4.職場環境のモニタリングと改善サイクル
- 3.4.1.アンケート・面談・データ活用のポイント
- 4.よくある対応漏れと注意点
- 4.1.就業規則の更新漏れ
- 4.2.相談窓口が機能していない
- 4.3.教育を実施していない
- 4.4.記録・証跡が残っていない
- 5.法令対応におけるリスク管理とコンプライアンス
- 5.1.法令違反による企業リスク
- 5.2.内部通報制度との連携と運用改善
- 6.労働施策総合推進法対応を成功させるポイント
- 7.まとめ
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労働施策総合推進法とは|企業が押さえるべき基本ポイント
労働施策総合推進法の正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。
労働施策の総合的な推進に関する基本方針のほか、職場におけるパワーハラスメントを防ぐために事業主が講ずべき措置などを定めています。
2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント防止措置が新たに事業主の義務となります。
参考:厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
労働施策総合推進法の目的と位置づけ
労働施策総合推進法は、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定や職業生活の充実などを図り、労働施策を総合的に推進するための法律です。
企業実務との関係では、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、事業主に相談体制の整備など、雇用管理上必要な措置を求めている点が重要です。
ただし、セクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法、妊娠・出産に関するハラスメントは男女雇用機会均等法、育児・介護休業等に関するハラスメントは育児・介護休業法が主な根拠法です。
ハラスメントの種類によって根拠法が異なる点に注意しましょう。
関連記事:コンプライアンス違反の事例を紹介 ハラスメントとの関係も解説
法律の構成と対象となる企業
職場におけるパワーハラスメント防止措置は、大企業では2020年6月1日、中小企業では2022年4月1日に義務化されました。
現在は、企業規模にかかわらず、すべての事業主が対象です。
事業主には、方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、発生後の迅速かつ適切な対応、プライバシーの保護などが求められます。
2026年の改正ポイント
2026年10月1日からは、顧客や取引先などによるカスタマーハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じることが、すべての事業主に義務づけられます。
同日には、改正男女雇用機会均等法により、採用活動などにおける求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置も義務化されます。
そのため、今回の改正は人事・法務部門だけでなく、営業、店舗、コールセンター、採用担当などを含めた準備が必要です。
関連記事:【法務担当者必見】2026年の主な法改正を一覧で解説
カスタマーハラスメント防止措置の義務化
改正法におけるカスタマーハラスメントとは、顧客、取引先、施設利用者などによる言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、その言動によって労働者の就業環境が害されるものをいいます。
暴行や脅迫、侮辱、暴言だけでなく、正当な理由のない過大な要求、長時間の拘束、継続的・執拗な言動なども該当する可能性があります。
電話やSNSなど、インターネット上の言動も対象となり得ます。
事業主に求められる主な対応は、次のとおりです。
- カスタマーハラスメントから労働者を保護する方針の明確化と周知
- カスタマーハラスメントの内容と対処方法の周知
- 相談に適切に対応できる体制の整備
- 事実関係の迅速かつ正確な確認
- 被害を受けた労働者への配慮
- 再発防止措置の実施
なお、顧客等からの苦情や申入れのすべてがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。
正当な申入れとカスタマーハラスメントを適切に区別できるよう、判断基準や対応手順を整理しておくことが重要です。
関連記事:法改正対応のポイントは?具体的な流れや情報収集方法を解説
すべての事業主が対象
カスタマーハラスメント防止措置は、企業規模にかかわらず、すべての事業主が対象です。
小規模企業に対する段階的な適用や猶予期間は設けられていません。
顧客と直接接する業種に限らず、取引先、委託元、施設利用者など、事業に関係する者から従業員が不適切な言動を受ける可能性がある企業でも、対応が必要です。
施行時期
カスタマーハラスメント防止措置と求職者等セクシュアルハラスメント防止措置は、2026年10月1日に施行されます。
企業は施行日までに、社内方針、相談体制、対応手順などを整備し、従業員へ周知する必要があります。
既存のパワーハラスメント相談窓口を活用する場合も、カスタマーハラスメントや採用活動中の相談を受け付けることを明確にしましょう。
関連記事:内部通報制度とは?目的・義務化・導入手順とポイントを徹底解説
企業に与える影響
今回の改正は、人事・法務部門だけで対応できるものではありません。
営業、店舗、コールセンターなどの顧客対応部門や、採用活動を担う部門を含め、社内横断で対応体制を整えることが重要です。
特に、顧客からの正当な意見・要求とカスタマーハラスメントをどのように区別するかは、重要な課題です。
判断を現場担当者だけに委ねず、責任者への報告基準や対応を引き継ぐ条件を定めておく必要があります。
関連記事:社内研修とは?目的・種類・進め方まで徹底解説【人材育成の基本】
労働施策総合推進法が求める企業の義務
企業には、ハラスメントを防止する方針を明確にし、相談に対応する体制を整えることが求められます。
また、問題が発生した場合には、事実関係を確認し、被害者への配慮や再発防止を行う必要があります。
事業主の方針の明確化と周知・啓発
事業主は、ハラスメントを許容しない方針や、行為者に対して適切に対処する方針を明確にし、管理監督者を含む従業員へ周知・啓発する必要があります。
方針は、就業規則、ハラスメント防止規程、社内ポータル、研修資料などに反映します。
2026年改正への対応では、カスタマーハラスメントに対して毅然と対応し、従業員を保護することも明記しましょう。
関連記事:コンプライアンスと法務の違いは?業務内容や部門を分けるメリット・デメリットを解説
相談体制の整備と不利益取扱いの禁止
企業は相談窓口を設け、担当者が適切に対応できる体制を整備します。
実際にハラスメントが発生した場合だけでなく、該当するか判断しにくい段階でも相談できることを周知することが重要です。
相談者や関係者のプライバシーを保護するとともに、相談や事実確認への協力を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
窓口担当者には、受付方法、記録範囲、情報共有先、緊急時の対応などをあらかじめ伝えておきましょう。
パワーハラスメント・カスタマーハラスメントと他のハラスメント対策との関係
企業が対応すべきハラスメントには、パワーハラスメントやカスタマーハラスメントのほか、職場および採用活動におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントがあります。
根拠法はそれぞれ異なりますが、方針の周知、相談体制の整備、事実確認、被害者への配慮、再発防止といった実務には共通点があります。
窓口や規程を一体的に整備しつつ、対象者や判断基準の違いを明確にすることが重要です。
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企業規模にかかわらず求められる対応
パワーハラスメント防止措置に加え、2026年10月1日から義務化されるカスタマーハラスメント防止措置についても、企業規模にかかわらず対応が求められます。
ただし、必要な体制の整え方は、企業規模や組織体制によって異なります。
専任の法務・人事担当者を置くことが難しい企業では、相談窓口の担当者と対応責任者を明確にしたうえで、必要に応じて外部相談窓口や弁護士、社会保険労務士などの専門家を活用する方法もあります。
重要なのは、専任部署の有無ではなく、相談を受けた際に誰が対応し、必要に応じて誰へ報告・相談するのかを明確にしておくことです。
自社の規模や業務内容に応じて無理のない体制を構築しつつ、必要な対応が確実に行える状態を整えておきましょう。
関連記事:コンプライアンスとガバナンスとは?意味の違いと企業が行うべき取り組みを解説
労働施策総合推進法に基づく実務対応の進め方
2026年法改正への対応は、新たな制度を一から作るのではなく、現在のハラスメント対策を点検し、不足している部分を追加していくと進めやすくなります。
社内規程・就業規則の整備
まず、既存の就業規則やハラスメント防止規程を確認します。
カスタマーハラスメントの定義と具体例、従業員を保護する会社の方針、相談・報告先、顧客等への対応手順などを明記しましょう。
あわせて、社内での情報共有や意思決定の流れ、被害を受けた従業員への配慮、再発防止策も定めます。
顧客対応方針やサービス利用規約、取引契約などの見直しが必要になる場合もあります。
関連記事:社内規程の種類と作り方、作成のポイントをわかりやすく解説
相談体制・通報窓口の設置と運用
相談窓口は、設置するだけでなく、誰がどのような方法で利用できるかを周知する必要があります。
電話、メール、フォーム、対面など、従業員が利用しやすい手段を検討しましょう。
カスタマーハラスメントの場合、相談後も顧客対応が続くことがあります。
担当者の交代、複数名での対応、警察や弁護士への相談など、状況に応じた保護措置を実行できる体制が必要です。
従業員教育・管理職研修の実施
研修は全従業員へ一律の内容を伝えるだけでなく、役割に応じて設計することが重要です。
- 全従業員には、ハラスメントの定義、会社方針、相談方法を周知する
- 管理職には、相談を受けた際の初期対応、事実確認、情報管理を伝える
- 顧客対応部門には、カスハラの判断基準、現場対応、報告手順を説明する
- 採用担当者や面接官には、求職者等への不適切な言動と採用活動上の留意点を伝える
- 相談窓口担当者には、傾聴、記録、プライバシー保護、関係部署との連携を教育する
研修は一度で終わらせず、実際の相談事例や制度変更を反映しながら定期的に実施しましょう。
関連記事:外部研修(社外研修)とは?メリットやおすすめ内容、活用法を徹底解説
職場環境のモニタリングと改善サイクル
制度の運用状況を定期的に確認し、課題があれば改善します。
相談件数だけでなく、相談後の対応時間、再発状況、従業員の認知度なども確認すると、制度の実効性を把握しやすくなります。
相談が少ないことが、必ずしも問題の少なさを意味するとは限りません。
窓口の認知度が低くないか、相談後の不利益を懸念されていないかも確認する必要があります。
アンケート・面談・データ活用のポイント
従業員アンケート、面談、離職率、休職状況、残業時間などを組み合わせることで、職場環境の変化を把握しやすくなります。
カスタマーハラスメント対策では、顧客対応記録、クレームの内容、対応時間、本社や警察への報告状況なども参考になります。
ただし、個人情報や相談者を特定できる情報は必要以上に共有せず、利用目的と閲覧権限を明確にしましょう。
関連記事:中小企業が法務トラブルを防ぐには?法務部門の重要性と導入のポイントを解説
よくある対応漏れと注意点
法令対応では、規程を作成しても、現場で運用できなければ十分とはいえません。
特に、既存のパワーハラスメント対策をそのまま流用し、顧客対応や採用活動に必要な手順が抜け落ちるケースには注意が必要です。
就業規則の更新漏れ
就業規則や社内規程が古いままでは、会社の方針や相談方法を従業員が正確に把握できません。
2026年改正に合わせて、カスタマーハラスメントの定義、顧客等への対応方針、相談・報告経路などを追加します。
規程だけでなく、顧客対応マニュアルや採用担当者向けガイドラインとの整合性も確認しましょう。
関連記事:労務トラブルとは?発生時の対応手順や注意点、未然に防ぐ対策を解説
相談窓口が機能していない
窓口を設けても、担当者が対応方法を理解していない、連絡先が周知されていない、相談後の不利益を心配して利用できないといった状態では、十分に機能しません。
窓口担当者の役割、秘密保持、記録方法、責任者への報告基準を明確にし、定期的に運用状況を確認することが重要です。
教育を実施していない
従業員が判断基準や報告方法を知らなければ、問題の放置や不適切な初期対応につながります。
特に、顧客対応部門と採用担当者には、それぞれの業務で起こり得る具体例を用いた研修が有効です。
正当な苦情とカスタマーハラスメントの違いも説明し、顧客からの意見や権利を不当に制限しないよう配慮しましょう。
記録・証跡が残っていない
相談内容、対応経緯、事実確認、被害者への配慮、再発防止措置などは、必要な範囲で記録します。
方針の周知や研修の実施履歴も保存しておくと、運用状況を確認しやすくなります。
ただし、すべての情報を無期限に保存するのではなく、保存目的、保存期間、閲覧権限、廃棄方法を定め、個人情報を適切に管理する必要があります。
関連記事:データ管理の方法とは?最適化するメリットや成功させるためのポイントを解説
法令対応におけるリスク管理とコンプライアンス
ハラスメント対策は、従業員の就業環境を守るための法令対応であると同時に、人材定着や企業の信用にも関わる経営課題です。
規程、相談、教育、モニタリングを一体的に運用し、事業内容や顧客との接点に応じた対応体制を整えることが重要です。
法令違反による企業リスク
必要な措置を講じていない場合、厚生労働大臣による助言、指導、勧告などの対象となる可能性があります。
勧告に従わない場合には、企業名が公表されることもあります。
また、個別の事案によっては、従業員との紛争や損害賠償請求につながる可能性があります。
採用活動や取引関係への影響も考えられるため、問題が起きてから対応するのではなく、予防と早期把握に取り組む必要があります。
関連記事:コンプライアンスと企業倫理の関係とは?意識を向上させる取り組みについても解説
内部通報制度との連携と運用改善
既存の内部通報制度とハラスメント相談窓口を連携させる方法もあります。
ただし、両者は受付対象や調査手順が異なる場合があるため、役割分担を明確にする必要があります。
相談内容を適切な担当部署へ引き継げる体制を整え、情報共有は対応に必要な範囲へ限定します。
窓口によって案内や対応が異ならないよう、共通の対応方針や記録様式を整えることも有効です。
関連記事:顧問弁護士とは?一般弁護士との違い・相談内容・メリット・選び方を徹底解説
労働施策総合推進法対応を成功させるポイント
法令対応を実効性のあるものにするには、制度の整備だけでなく、経営層による方針の発信、現場への浸透、継続的な改善が必要です。
トップマネジメントのコミットメント
経営層は、ハラスメントを許容せず、被害を受けた従業員を保護する方針を明確に示す必要があります。
カスタマーハラスメントの場合、顧客との関係や売上を優先し、現場に対応を任せてしまう可能性があります。
従業員の安全を優先する場面や、取引・サービス提供を中止する場合の判断基準を経営層が示すことが重要です。
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従業員が相談しやすい環境づくり
従業員に対し、相談したことを理由に不利益な取扱いを受けないことや、相談者のプライバシーを保護することを周知します。
管理職が日常的な相談を受けた際に、個人で抱え込まず、正式な窓口へつなげられる体制も必要です。
必要に応じて、外部相談窓口や匿名で相談できる手段の導入も検討しましょう。
継続的な改善とデータに基づく運用
相談件数、対応期間、研修参加率、再発状況、従業員アンケートなどを確認し、制度の改善に活用します。
数値だけで判断せず、相談者や現場担当者の声も組み合わせることが重要です。
また、相談件数を管理職の評価に直接使用すると、相談の抑制や隠蔽を招く可能性があるため、指標の設計には注意が必要です。
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外部専門家の活用と第三者視点の導入
社内で判断が難しい場合は、弁護士、社会保険労務士、産業医などへ相談する方法があります。
外部専門家は、規程の確認、事実調査、被害者への配慮、再発防止策などについて客観的な助言を行えます。
外部相談窓口を利用する場合は、受付後の連絡方法、緊急時の対応、社内への情報共有範囲を事前に決めておきましょう。
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まとめ
労働施策総合推進法に基づき、職場におけるパワーハラスメント防止措置は、すでにすべての事業主へ義務づけられています。
さらに2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント防止措置も企業規模にかかわらず義務化されます。
同日には、改正男女雇用機会均等法による求職者等セクシュアルハラスメント防止措置も施行されます。
企業は、既存の規程や相談窓口を点検し、顧客対応と採用活動を含めた方針、対応手順、研修を整備しておきましょう。
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