
IPOのメリットとデメリットとは?企業・経営者・従業員に与える影響をわかりやすく解説
企業が成長のステージとして選択する「IPO(新規株式公開)」。
資金調達力や知名度の向上など大きなメリットがある一方で、上場準備や株主対応といった負担も伴います。
この記事では、企業・経営者・従業員それぞれにとってIPOがどのような影響をもたらすのか、メリットとデメリットをわかりやすく解説します。
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目次[非表示]
- 1.IPO(新規株式公開)とは
- 1.1.上場との違い
- 1.2.ダイレクトリスティングとの違い
- 1.3.上場する市場の種類
- 1.4.その他(福岡証券取引所・札幌証券取引所)
- 2.IPOにおける企業のメリット
- 2.1.資金調達方法の多様化と調達力の向上
- 2.2.知名度の向上
- 2.3.経営管理体制の強化・社会的信用の増大
- 2.4.役職員のモチベーションやモラルの向上
- 2.5.経営の安定化
- 3.IPOにおける経営者のメリット
- 4.IPOにおける従業員のメリット
- 5.株式上場のデメリット
- 5.1.上場準備に時間とコストがかかる
- 5.2.上場の継続コストがかかる
- 5.3.株主に配慮した経営が必要になる
- 5.4.株価で企業価値が判断される
- 5.5.企業買収のリスクが高まる
- 6.まとめ
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IPO(新規株式公開)とは
PO(Initial Public Offering、新規株式公開)とは、企業が自社の株式を証券取引所に公開し、一般投資家が売買できるようにすることを指します。
これにより企業は株式市場から直接資金を調達できるようになり、成長戦略の実現や信用力の向上につながります。
IPOは単なる資金調達手段にとどまらず、企業の社会的地位やブランド力を大きく高める重要なイベントです。
上場との違い
「IPO」と「上場」は似た意味で使われますが、厳密には異なります。
IPOは「初めて株式を公開する行為」を指し、上場は「証券取引所に株式が登録され、継続的に売買される状態」を意味します。
つまりIPOは上場の入口であり、上場後は決算情報の開示やガバナンス体制の維持など、継続的な義務が課されます。
企業にとってIPOは一度きりのイベントですが、上場はその後長期的に続くステージなのです。
関連記事:上場企業・IPO準備企業の陰に潜む反市場勢力とは?基本と用語について解説
ダイレクトリスティングとの違い
IPOとよく比較されるのが「ダイレクトリスティング」です。
IPOでは証券会社を通じて新株を発行し、資金調達を行うのが一般的です。
一方、ダイレクトリスティングは新株を発行せず、既存株主が保有株を直接市場に売却する方式です。
資金調達を目的とするならIPOが適しており、流動性確保や知名度向上を目的とするならダイレクトリスティングが選ばれる傾向があります。
米国ではSpotifyやSlackがダイレクトリスティングを採用した例として知られていますが、日本ではまだ一般的ではありません。
関連記事:IPO準備時におけるM&Aのメリット・デメリット 実施時の注意点も解説
上場する市場の種類
日本には複数の証券取引所があり、企業の規模や成長段階に応じて選択肢があります。
市場ごとに特徴があり、企業は自社の戦略に合った市場を選ぶことが重要です。
東京証券取引所
日本最大の証券取引所であり、世界的にも有数の規模を誇ります。
2022年の市場再編により「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに区分されました。
プライム市場はグローバルに事業を展開する大企業向け、スタンダード市場は安定的な事業基盤を持つ中堅企業向け、グロース市場は成長性を重視するベンチャー企業向けです。
企業は自社のステージに応じて市場を選択できます。
関連記事:IPO準備企業が上場を目指す上で知っておくべきインサイダー取引規制とは
名古屋証券取引所
中部地方の企業を中心に上場している地域密着型の市場です。
規模は東京証券取引所に比べると小さいですが、地域経済の活性化に寄与しており、地元企業にとっては知名度向上や資金調達の場として重要な役割を果たしています。
その他(福岡証券取引所・札幌証券取引所)
福岡証券取引所や札幌証券取引所は地方経済の発展を目的とした市場です。
福岡は九州地方、札幌は北海道の企業を中心に上場しており、地域企業の成長を支える役割を担っています。
規模は限られますが、地域に根ざした企業にとっては上場による社会的評価の向上や人材採用の強化につながるため、意義は大きいといえます。
関連記事:IPO準備企業が上場までのフェーズごとにやるべきこと
IPOにおける企業のメリット
企業がIPO(新規株式公開)を行うことは、単なる資金調達の手段にとどまらず、経営基盤の強化や社会的信用の向上など、多方面にわたる効果をもたらします。
IPOは企業の成長ステージを大きく変える契機となり、経営者や従業員にとっても大きな意味を持ちます。
ここでは、企業視点での具体的なメリットを整理してみましょう。
資金調達方法の多様化と調達力の向上
IPOによって企業は株式市場から直接資金を調達できるようになります。
銀行融資や社債発行に依存せず、成長投資や研究開発に必要な資金を柔軟に確保できる点は大きなメリットです。
財務基盤の安定が高まることで、企業は景気変動や金融環境の変化にも強くなり、持続的な成長を目指せます。
関連記事:IPO準備の前段階?自社の経営を上場基準に合わせる「ショートレビュー」とは
知名度の向上
上場によって企業は社会的な注目を集めやすくなります。
証券取引所に株式が公開されることで、ニュースや投資家の関心を引き、ブランド力や認知度が飛躍的に高まります。
知名度の向上は顧客獲得や販売促進に直結するだけでなく、優秀な人材の採用にもプラスに働きます。
特にベンチャー企業や中小企業にとっては、IPOを通じて一気に全国的な知名度を得られる点が大きな魅力です。
経営管理体制の強化・社会的信用の増大
IPOを行うためには、厳格な内部管理体制や情報開示の仕組みを整備する必要があります。
監査法人によるチェックや証券会社との調整を経て、透明性の高い経営が求められるのです。
これにより企業は自然とガバナンスを強化し、コンプライアンス意識も高まります。
結果として取引先や金融機関からの信用が増し、ビジネスチャンスの拡大につながります。
社会的信用の増大は、長期的な企業価値の向上に直結する重要な要素です。
関連記事:IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要?必要な理由と選び方について解説
役職員のモチベーションやモラルの向上
「自分の会社が上場した」という事実は、従業員に大きな誇りを与えます。
さらにストックオプション制度や従業員持株会を通じて、従業員が会社の成長を自分の資産形成と結びつけられるようになります。
これにより従業員は企業の成長を自分事として捉え、モチベーションやモラルが向上します。
役職員にとってIPOは単なる制度ではなく、働く意欲を高める強力なインセンティブとなるのです。
経営の安定化
IPOによって資金調達力や信用力が高まることで、企業は経営基盤を安定させることができます。
株式市場からの資金調達は、銀行融資に比べて返済義務がなく、財務の柔軟性を高めます。
また、上場していることで取引先との関係を強化し、長期的な契約や提携を結びやすくなります。
結果として企業は景気変動や競争環境の変化に左右されにくくなり、持続的な成長を実現しやすくなるのです。
関連記事:IPO準備企業の経理に求められる役割とは 具体的に行う業務についても解説
IPOにおける経営者のメリット
企業がIPOを行うことは、会社全体の成長や外部からの信頼獲得に大きな効果をもたらしますが、経営者個人にとっても大きなメリットがあります。
特に株式を保有する創業者や経営陣にとっては、資産価値の増加や創業者利益の実現といった具体的な恩恵を享受できる点が特徴です。
ここでは、経営者視点でのメリットを整理してみましょう。
保有資産の値上がり
IPOによって企業の株式が市場で取引されるようになると、経営者が保有する株式は市場価格で評価されます。
企業の成長や業績拡大に伴い株価が上昇すれば、経営者の資産価値も大きく増加します。
これは経営者にとって強力なインセンティブとなり、企業価値を高めるための経営努力を促す要因にもなります。
さらに、株式が流動性を持つことで、資産としての安定性も高まり、個人の財務計画にもプラスに働きます。
関連記事:ベンチャーが上場を目指すメリットとは IPO準備における内部統制強化についても解説
創業者利益の実現
IPOは経営者にとって「創業者利益」を得る機会でもあります。
これは、創業時から保有していた株式を上場後に売却することで得られる利益を指します。
長年の努力やリスクを背負ってきた創業者にとって、IPOはその成果を金銭的に実現する重要な節目となります。
得られた資金は個人資産の形成だけでなく、新規事業への投資や社会貢献活動など、次の挑戦に活用することも可能です。
創業者利益は経営者にとって大きなモチベーションであり、IPOを目指す理由の一つといえるでしょう。
関連記事:スタートアップに絶対押さえてほしい「IPO/M&A」を妨げる反社のワナ
IPOにおける従業員のメリット
IPOは企業にとって大きな転機ですが、その恩恵は経営者だけでなく従業員にも及びます。
上場によって社会的信用が高まり、働く環境や待遇面にもプラスの影響を与えることが多いのです。
ここでは従業員視点でのメリットを整理します。
上場企業で働くことによる社会的信用の向上・満足感向上
「上場企業で働いている」という肩書きは、社会的信用を高める大きな要素となります。
家族や友人、取引先からの評価も高まり、従業員自身の満足感や誇りにつながります。
また、上場企業は情報公開やガバナンスが整備されているため、安心して働ける環境が整いやすい点も魅力です。
関連記事:IPO準備企業が整備すべき人事・労務とは 懸念点についても解説
従業員持株会などを通じての財産形成
IPO後は従業員持株会やストックオプション制度を通じて、従業員が自社株を保有できる機会が増えます。
会社の成長と株価上昇が従業員の資産形成に直結するため、給与以外の報酬を得られる仕組みとして大きなメリットです。
自分の努力が企業価値の向上につながり、それが資産として返ってくることは働く意欲をさらに高める要因となります。
関連記事:上場準備にIPO経験者は必要?経験者のスキルとIPOチームのメリットを解説
株式上場のデメリット
IPO(新規株式公開)は企業にとって資金調達力やモチベーションを高める大きなチャンスですが、その裏側には見逃せないデメリットも存在します。
上場はゴールではなくスタートであり、継続的な義務やリスクを伴います。
ここでは、企業がIPOを検討する際に理解しておくべき主なデメリットを整理します。
上場準備に時間とコストがかかる
IPOを実現するためには、監査法人による会計監査、証券会社との調整、内部管理体制の整備など膨大な準備が必要です。
通常は数年単位の時間を要し、専門家への報酬やシステム導入など多額の費用も発生します。
成長投資に充てたい資金や人材が上場準備に割かれるため、経営資源の分散という側面もあります。
関連記事:IPOにかかる費用とは?段階別の費用とコストを抑えるポイントを解説
上場の継続コストがかかる
上場後も四半期ごとの決算開示、監査費用、IR活動、株主総会の開催など継続的なコストが発生します。
これらは非上場企業には不要な負担であり、特に中小企業にとっては経営を圧迫する要因となり得ます。
上場維持のためのコストは毎年発生するため、長期的な財務計画に組み込む必要があります。
株主に配慮した経営が必要になる
上場企業は株主の利益を重視する必要があり、短期的な業績改善を求められることもあります。
経営者が描く長期的なビジョンよりも、株主の期待に応えるための短期的な施策を優先せざるを得ない場面も出てきます。
経営の自由度が制約される可能性がある点は、IPOを検討する際に重要な考慮事項です。
関連記事:株主総会とは?基礎知識や決定事項、開催の流れをわかりやすく解説
株価で企業価値が判断される
株価は市場環境や投資家心理に左右されやすく、必ずしも企業の本質的価値を反映するとは限りません。
業績が堅調でも外部要因で株価が下落すれば、企業価値が低く評価されてしまうことがあります。
株価の変動に経営が振り回されるリスクは、上場企業ならではの課題です。
企業買収のリスクが高まる
株式が公開されることで、敵対的買収のリスクも高まります。
市場で株式を大量に取得されれば、経営権を奪われる可能性があります。
企業は買収防衛策を講じる必要があり、これもまたコストや経営上の負担となります。
関連記事:上場には何年かかる?IPO準備企業が押さえておきたい上場への作業とスケジュール
まとめ
IPOは企業にとって資金調達力や信用力を高める大きなチャンスであり、経営者や従業員にも資産形成や社会的信用の向上といったメリットをもたらします。
一方で、上場準備や継続的なコスト、株主への配慮といった負担も伴います。
つまりIPOは「成長のための飛躍のステージ」であると同時に、「厳しいルールの中で戦う覚悟」が求められる制度です。
企業はメリットとデメリットを十分に理解したうえで、自社の成長戦略に合致するかどうかを慎重に判断することが重要です。
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